10月4日より全国ロードショー
3期目の大統領任期のために憲法を改正した独裁的な
アメリカ大統領(ニック・オッファーマン)に反発して
19の州が連邦政府から離脱。
アメリカの各地でテキサスとカルフォルニアの同盟から
なる西部勢力と政府軍による激しい武力衝突が繰り広げ
られていた。
政府軍の敗戦が濃厚になる中、ニューヨーク在住の
戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)と記者の
ジョエル(ワグネル・モウラ)は14ヶ月間一度も取材に
応じていない大統領への単独取材を計画する。
雄大な自然に囲まれたハイウェイからの景色はのどかに見えるが、ひと度、人に出会うと
敵か味方か分からずに銃を向けられる。
買い物に立ち寄ったガソリンスタンドや、民兵グループによる銃撃戦など、リーたちは死が
身近にある恐怖をひしひしと感じながら、おぞましい内戦の光景をカメラに収めていく。
リーたちが道中で遭遇する戦場のエピソードは強烈で、とても恐ろしい。
とくに仲間であるはずの国民同士が戦う狂気を表したエピソードは圧巻だ。
さまざまな危険を乗り越えて、たどり着いたワシントンD.C.での戦いを描いた映画終盤も
見せ場が満載で、ラストシーンまで本当に面白い。
監督・脚本は、イギリスの鬼才として注目されるアレックス・ガーランド。
ダニー・ボイル監督のホラースリラー『28日後……』(’07年)で脚本家デビューを飾り、
監督デビュー作『エクス・マキナ』(’15年)の独創的な映像世界で高い評価を受けた。
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CINEMAライター 能登春子/木香圭介/宮島一美/石倉ことこ
ライター:能登春子
シネマプレイスがお届けするおすすめ映画レビューは独自の視点で新作映画をご紹介しています
政治家の失政が招いた現代のアメリカ内戦
恐怖と狂気と驚愕の戦争ロードムービー
シネマプレイスはあんか通販とともに、楽しい情報をお届けいたします。
日本では南北戦争として知られる、シビル・ウォー
(市民戦争)とは1861~65年にかけて奴隷制度などを
めぐり、アメリカが南部と北部の州に分かれて戦った
アメリカ内戦のこと。
かなり煽情的なタイトル通り、現代に起こったアメリカ
内戦の顛末を描いた本作は決して絵空事とは思えない
生々しい恐怖に満ちている。
リーの恩師であるベテラン記者サミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)、さらに
成功をめざす若手女性カメラマンのジェシー(ケイシー・スピーニー)を加えた一行は取材車で
ワシントンD.C.へ向かう。
『スパイダーマン』シリーズのキルスティン・ダンストが心に傷を抱えた
戦場カメラマン・リーを貫禄たっぷりに演じている。
『エブリシング・エブリウェア・アール・アット・ワンス』(‘22年)など、
奇想天外な作品で人気を博す映画スタジオA24が過去最高額の
予算を投じて製作した戦争アクション大作は、アメリカのみならず
世界的に政治家による失政への不満が高まる今、観るべき問題作
である。
9月27日より全国ロードショー
ライター:能登春子
さまざまな品物を買い占め、高値で販売し、
金儲けをする。
製作者の思いを踏みにじり、購入者の弱みに
つけこむ転売業がインターネットの中にあふれて
いる。
「生活を変えたい」という単純な動機から、地道に
働くことを止め非情な“転売ヤー”となった若者の身に
起こる恐怖を描く。
『CURE』(’97年)、『岸辺の旅』(’15年)、
『スパイの妻』(’20年)など、
ミステリータッチの作風が世界的な
評価を受ける黒沢清監督と、
変幻自在の怪優・菅田将暉が
タッグを組んだサスペンススリラーだ。
ネット社会が生み出した狂気の世界
菅田将暉が恐怖のサバイバルゲームに挑む
吉井と、彼に恨みを抱く者たちとの壮絶なサバイバルゲームはスリル満点。
菅田、窪田、荒川など実力派俳優たちの鬼気迫る演技は見ものだ。
インターネットを経由した“実態のない”サービスを意味する
「Cloud(クラウド)」。
SNSでの誹謗中傷や炎上などがエスカレートする昨今、バーチャル上で
生まれた悪意や憎悪がリアルな世界に侵食する狂気と恐怖を肌で感じて
ほしい。
そんな2人が謎のSOSメッセージを受けたことから、
サイバトロン星で密かに進行する陰謀に気づく。
9月20日より全国ロードショー
ライター:能登春子
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これまでの作品のような実写ではなく、登場するのはトランスフォーマーたちだけ。
まるで人間のような豊かな表情、スピード感あふれるトランスフォーマーたちの動き、きらびやかで
精緻なサイバトロン星の光景など、最新CG技術を駆使した最先端の映像世界に驚かされる。
台中の下町で40年にわたり理髪店を営むアールイ
(ルー・シャオフェン)は、客たちがそれぞれの思いを
込めた注文に真摯に応えたり、顔を見せない常連客を
心配して電話をかけたりと、勤勉で心優しい。
彼女は1人で育て上げた3人の子どもたちの不安定な
生活を心配しているが、子どもたちはアールイの親心など
お構いなしだ。
そんな中、次女リン(ファン・ジーヨウ)の別れた夫チュアン
(フー・モンボー)は幼い息子を散髪に連れてくるなど、
アールイを気にかけてくれていた。
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浮気相手のハヤシ(金子大地)から愛を告白されたカナは、優しい恋人・ホンダ(寛一郎)の
前から黙って消え、ハヤシと同棲を始める。
新しい生活に胸躍らせる2人だが、やがて些細なことから衝突するようになる。
他にも、孤独な大学生フン(チェ・ミンホ)が自動販売機の
取り出し口で見つけた手紙に導かれるエピソードや、
受験生のスンジン(チョン・ドンウォン)が車椅子の女性を
助けるエピソードなど、物騒な殺人事件が起こる中でも、
自分はそんなこととは無縁と思っている普通の人々が突然、
死の恐怖に直面することになる。
ハラハラ、ドキドキ、ワクワクするようなアクション映画が
生まれるのは、危険なアクションシーンに命がけで挑む
スタントマンがいるからこそ。
「フォールガイ(身代わりの人)」と呼ばれる、名前も顔も
知られない影のヒーロー、スタントマンに光を当てた、
とびきりイカしたアクション映画が登場した。
〈楽しいはずなのに、心が満たされない〉〈そもそも、自分にとって楽しいことって何?〉〈自分は
本当は何がしたいのか?〉。
人生が退屈なのは自分が本当にやりたいことをしていないからに違いない。でも、自分の欲求が
分からない人は案外多いのではないだろうか?
8月16日より全国ロードショー
ライター:能登春子
いびつな人間関係から生まれる心の闇
涙の女王チェ・ジウが恐怖の世界へ
さまざまなトランスフォーマーたちが入り乱れ、緻密に練り上げられた
ストーリーは少々複雑だが、息をつかせぬ展開でよくできている。
正義のオートボットを率いる司令官オプティマスプライムと、冷酷な
ディセプティコンのリーダー、メガトロンとの間にある悲しい宿命が
明らかになり、また新たな視点で2人の闘いをみられるだろう。
吉井(菅田将暉)は町工場に勤めながら、“ラーテル”というハンドルネームを使い、転売で
日銭を稼いでいた。
転売の仕事を教わった高専の先輩・村岡(窪田正孝)からの“デカい話”や勤務先の社長・
滝本(荒川良々)からの昇進の打診を断り、真面目にコツコツ転売業に励んだ吉井は順調に
売り上げを伸ばし、郊外の湖畔に建つ瀟洒な邸宅に自宅兼事務所を構え、恋人・秋子
(古川琴音)と共に移り住む。
何台ものパソコンを所有し、地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇い、ますます転売業に注力する
吉井だが、誰かに狙われているような不審な出来事が相次ぐ。
映像、ストーリーともに考え抜かれた
迫真的なロボットたちの世界に圧倒
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20年にわたり続く、人気ロボットヒーローアクション
映画『トランスフォーマー』シリーズ。
8作目となる本作は、トランスフォーマーたちの故郷
サイバトロン星を舞台に、トランスフォーマーたちの
ルーツが描かれる。
感情移入を誘う素晴らしいロボットたちの活躍に今後も期待したい。
監督を手がけるのは、『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリー。
ある日、アールイは遠くに引越した長年の常連客が病床にあると知り、店を休み、出張散髪に
行くことにする。
チュアンはアールイを心配し、同行することを申し出る。
ところがチュアンに急な仕事が入ったことから、アールイはたった一人で愛車に乗り、見知らぬ
町を目指す。
9月6日より全国ロードショー
ライター:能登春子
河合優実が熱望した山中瑶子監督作
混とんとした現代を生き抜く力が湧いてくる
社会の足かせで自分の望みを実現できない人も多いだろうが、若いうちなら抑圧された社会を
打ち破るパワーも必要なのではないだろうか?平穏なハヤシとの生活でも、心が満たされない
カナは躁鬱気味になりエキセントリックな言動でハヤシを困らせる。
しかし、ハヤシはめげずにカナのやり場のない思いを体を張って受け止めるのだ。
韓国ホラー映画歴代興収第2位を記録した『コンジアム』
のチョン・ボムシク監督の待望の最新作は、日常に潜む
恐怖を描くスリラー。
大ヒット韓流ドラマ『冬のソナタ』のチェ・ジウが7年ぶりに
映画出演を果たすほか、男性アイドルグループSHINee
のチェ・ミンホ、国民的歌手のチョン・ドンウォンなど、
韓国の人気スターが顔を揃えているのも見どころだ。
カナとハヤシのぶつかり合いは、あまりの激しさに
驚かされるが、痛快で微笑ましくも映る。
破滅的なカナは賛否の分かれるキャラクターだが、
河合優実の緩急自在の演技は見応えがある。
河合優実は女優になる前に観た『あみこ』に感銘を受け、
山中監督に「いつか出演したい」と伝えていたという。
そんな河合の情熱がカナを血の通った人間にしている
のかもしれない。
韓国ソウルで女性ばかりを狙う連続殺人事件が発生し、
世間を賑わせていた。
ある日、マンションで一人暮らしをしているヒョンジョン
(チェ・ジウ)の部屋に「火災報知機の点検をしに来た」
という不審な中年男性が訪れる。
警戒するヒョンジンをよそに男は無理やり部屋に入り込み
部屋中の火災報知機を点検して回るが、何を仕出かすか
分からない雰囲気を醸しだしていた。
さまざまなスタントをこなし誇り高いスタントマンの矜持を見せる一方で、素のコルトは飄々として
いたり、やさぐれ感があったりと、実に人間味あふれるキャラクター。
絶対的なヒーローではないコルトが頑張る姿と、アクション俳優ではないゴズリングが奮闘する姿が
重なり、コルト=ゴズリングを次第に応援したくなってくる。
フルCG長編アニメのパイオニアであるピクサーは革新的
な映像技術ばかりでなく、豊かなイマジネーションから
生み出されるストーリーが本当に素晴らしい。
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ところがゲイルはコルトにもう一つ“仕事”を依頼する。
それは、なんと撮影中だった主演のトムが行方不明になり、そのトムを探すことだった。
トムを探すコルトが次々にトラブルに巻き込まれ、ド派手なアクションが展開する。
『きみに読む物語』(‘04年)、『ラ・ラ・ランド』’16年)など、演技巧者のライアン・ゴズリングが
果敢にアクションシーンをこなしているのが新鮮だ。
8月1日より全国ロードショー
ライター:能登春子
幸せに生きるために大切なこと
愛らしい感情たちのカラフルな大冒険
互いの素性が知れないインターネットでのやり取りは人の善悪の判断を狂わせる。
金儲けに走り、アコギな転売を重ねる吉井は、実はさまざまな人の恨みをかっている。
吉井に被害を受けた者もいれば、吉井の成功をねたむ者や吉井の無礼な態度に怒る者など、
理不尽な恨みを抱く者もいるが、吉井が安易にインターネットを使った結果生まれた憎悪が
彼に襲いかかる。
9月20より全国ロードショー
サイバトロン星の地下都市で働く労働ロボット、オライオン
パックスはヒーローに憧れる若者。
挑戦的でいつもパワフルに動き回り、無鉄砲な行動も
しばしば。
一方、D-16は規則正しくルールに従順で、やんちゃな
オライオンパックスにいつも振り回されていた。
だが、性格は対照的でも2人は固い友情で結ばれていた。
ライター:能登春子
大切な店を休んで届けた優しい心
誰かのために行動する母の姿が胸を打つ
忙しくない毎日を生きる人々へ。
たった1日の切なくて、温かい「休みの日」の出来事を
見て、心を穏やかにしてほしい。
人を労り、思いやる心の大切さを描いた癒しあふれる
台湾映画だ。
こんなひたむきな感情たちが頭の中にいたら、人生が楽に
なるのかもしれない。
どんな感情も自分のものだから、大切に付き合っていきたいと思わせる。
〈幸せな生き方〉について、また新たな気付きが得られるだろう。
PRマーケティングのプロ、ケリー(スカーレット・ヨハンソン)
はニクソン大統領に仕える政府関係者モー(ウディ・
ハレルソン)に請われて、NASAの月面着陸プロジェクトの
PRをすることになる。
7月5日より全国ロードショー
ライター:能登春子
感情の読めないミステリアスなフェラーリをアダム・サンドラーが堂々と演じていて
かっこいい。
また、内面に複雑な思いを抱えたラウラを演じたペネロペ・クルスは終始、不穏な
雰囲気を醸し出し、存在感たっぷりだ。
フェラーリファンお待ちかねのレースシーンでは現存するオリジナルカーを3Dスキャンで複製し、
当時のレースカーを作り出したという。
競合他社の車も多数登場するミッレミリアのレースシーンはスピード感と緊張感にあふれている。
前2作で、監督・脚本を手がけたジョン・クラシンスキーはマイケル・ベイと共に
製作にまわり、『PIG/ピッグ』のマイケル・サルノスキが監督・脚本を手掛けて
いる。
しかし、ストーリーの考案は、マイケル・サルノスキと共にジョン・クラシンスキー
が行っており、生きる意味を考えてみたくなる、ヒューマンタッチで心に沁みる作品
に上がっている。
6月14日より全国ロードショー
愛嬌たっぷりのイフたちの健気な思いに涙
笑いと癒しに溢れた極上のファンタジー映画
ライター:能登春子
愛嬌たっぷりの外見とは裏腹に、そんな切ない運命を抱えたキャラクターたちと人々との交流が
描かれる。
カルとビーはイフたちの新しいパートナー探しに奔走するが、イフたちが本当に会いたいのは
彼らを生んでくれた子どもたちだ。
健気なイフたちの想いが届くファンタジックな光景に胸が熱くなる。
身体的能力、制球技術に加えて、対戦相手の戦術を
読んだり、ウラをかいたりするための心理的な駆け引き
が重要になるスポーツ、テニスをモチーフに、1人の女性
に翻弄された2人の男子テニスプレイヤーたちの愛憎
渦巻く“人生ゲーム”がスリリングに描かれる。
建物に避難した人々はクリーチャーが音を立てると襲ってくることを知り、沈黙を守ろうとする。
しかし、緊急避難の放送が鳴り響いたり、パニックになった人が叫ぼうとしたり、機械が突然
作動したりと、音が出る度に突然現れるクリーチャーがとにかく怖い。
気味の悪い見た目と獰猛で残忍な性質のクリーチャーが街中にいる光景は絶望的で、
逃げ延びるのは不可能に思える。
6月28日より全国ロードショー
ライター:木香圭介
宮藤官九郎のクオリティの高いコメディで、コケティッシュ
な魅力と確かな演技力を見せつけ、一気に認知度を高めた
河合の最新主演映画として注目を集める本作品。
そして、不安や孤独を抱えて大人びたビーがイフたちとの出会いや父の入院を経て、本当に
大人になっていく姿が印象的だ。
大人になることは必要だけれど、忘れてはいけないこともある。
〈もしかしたら心の友だちが今もどこかで見守っていてくれるかも〉。
そう思えば心が豊かになり、現実世界も少しだけハッピーになるのかもしれない。
ホテル代さえ払えない落ち目の男子テニスプレイヤー、
パトリック(ジョシュ・オコナー)は世界プロテニス
トーナメントの下位レベルの選手で争う「チャレンジャー・
マッチ」で優勝し、再起を図ろうとしていた。
そこで、彼はかつて親友であり、テニスのライバルだった
アート(マイク・フェイスト)と気まずい再会を果たす。
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日本語吹き替え版ではビーの声を担当した稲垣来泉が素晴らしい。
儚な気な声でビーの不安な思いをうまく表現し、ビーへの感情移入を誘う。
勧善懲悪ものが多いジャッキー作品だが、今回はちょっと違う。
まず、共演が馬。
今までにも馬が登場したジャッキー作品はあったが、ここまでがっつりとコンビを組んだものは
始めて。
ライター:能登春子
破天荒な昭和の人気刑事ドラマが復活
令和でも、楽しく元気に暴れ回る!
そしてラストはこの馬のチートゥの演技に誰もが泣かされるだろう。
次に娘との葛藤。病気で亡くなった母親に何もしなかった父親に対して、葬式で罵倒してから
月日は流れているが、娘との溝は深い。
娘は徐々に受け入れようとしているのに、またもスタントマンのプライドがそれを邪魔する。
異国情緒漂うシャレた港町・横浜を舞台に、ダンディで
セクシーな刑事コンビのワイルドな活躍を描いた人気
テレビドラマ『あぶない刑事』。
1986年(昭和61年)のテレビ放送開始から実に38年を
経て、シリーズ8作目となる新作映画が完成した。
型破りな捜査手法とともに、女性にめっぽう弱いのもタカとユージの特徴。
昔、夏子と“深ーい”関わりのあった2人は、〈もしや彩夏は自分の娘ではないか〉と内心ドキドキ
する…、というタカとユージの“若気の至り”をユーモラスに絡めたストーリーは、やがて
元銀星会組長の息子・海堂(早乙女太一)との壮絶なバトルへと発展する。
花の都と歌われる華やかで瀟洒なイメージのある
フランス。
そこで暮らす移民たちの過酷な現実を伝えた衝撃作。
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一方のヘソン(ユ・テオ)は、ソウルの大学で工学を学び、兵役を経て就職したが、ずっとナヨンを
思い、探し続けていた。
やがてFacebookで繋がった2人は、オンラインチャットをするうちにかつての思いを取り戻し、
会いたい気持ちを募らせる。
しかし、アメリカで夢を追いかけるノラはヘソンと距離をとることにする。
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理不尽に家を奪われた移民たちの怒り
注目の社会派監督がパリの暗部に迫る意欲作
また、同じ頃、「T&Y探偵事務所」にハーレーを颯爽と乗りこなす若い女性、彩夏(土屋太鳳)が
現れる。
彩夏は、「自分を産んですぐに消えた母の夏子」を探してほしいと依頼する。
ライター:能登春子
5月24日よりロードショー
犯罪者がいると分かれば、街中でもバイクに乗りながらでも拳銃を撃ちまくる。
コンプライアンス遵守の令和の現代では、“不適切”と笑いのネタにもなるアクションシーンは
健在だ。
〈あぶ刑事〉ならではのハチャメチャなアクションシーンを存分に楽しんでほしい。
主演の刑事コンビに扮する舘ひろしと柴田恭平はなんと
70代!
昔と変わらぬスラリとした体型をキープし、年齢なりの
渋みを加えたカッコよさには尊敬の念すら覚える。
いくつになっても、明るく、全力投球でがんばる〈あぶ刑事〉
コンビの復活に、元気とパワーをもらえること請け合いだ。
中国映画ならではのヒューマンストーリーになっているのも、ジャッキー作品には珍しい。
最後にスタントシーン。
子供の頃からジャッキーのファンだった監督が脚本を執筆しているので、この作品
には今までジャッキーがやってきた数々のスタントシーンがオマージュのように
散りばめられている。
ジャッキーの作品を多く観てきた方なら嬉しいサプライズでしょう。
ちなみに、子供が京劇をしている舞台にルオが飛び込んでしまうシーンは、ジャッキーが
七小福という京劇出身なので、それを知っている人への遊び心です。
最後にひとつ質問があります。
ジャッキーの映画には、必ず最後にNG集がついているのは何故でしょう?
それは、エンドロールが出ると劇場から出ていってしまう観客を映画が終わるまで引き止める
為です。
横浜港署の刑事を定年退職したタカ(舘ひろし)とユージ
(柴田恭平)が、ニュージーランドで探偵として第2の人生
をスタートさせてから8年後。
警官と問題を起こし、ニュージーランドを“出禁”となった
2人は再び横浜に戻り、「T&Y探偵事務所」を開業する。
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一方、市長の急死で臨時市長に名乗りを上げた医師のピエール(アレクシス・マネンティ)は、
居住棟エリアの復興と治安改善を政策に掲げ、理想に燃えていた。
ところが、シリアからの移民家族の支援を行うピエールの妻ナタリー(オレリア・プティ)が
バンリューで嫌がらせを受けたことから、ピエールはバンリューの取り締まりを強化していく。
行政の怠慢に苦しめられる貧困層の移民たち。彼らの不満や怒りが治安の悪化となって表れる。
行政と移民たちとの間に生まれた悪循環の構図が最悪の方向へ向かっていく様子が説得力を
持って描かれる。
フィクションではあるが、終盤で描かれる行政が移民たちにした非道は恐ろしく、移民の1人の怒りが
爆発するのも無理はない。
〈もしもあの時、……していたら〉。
そんな〈忘れられない恋〉にざわめく心を優しく癒す、
切なくも愛しいラブストーリーが誕生した。
ソウルで生まれ育った少女ナヨンは12歳の頃、
クラスメイトの少年ヘソンと互いに思いを寄せ合っていた。
しかし、ナヨンが家族と共にカナダ・トロントに移住する
ことになり、2人は互いに気持ちを伝えないまま離れ離れ
になってしまう。
ナヨンからノラという英語名で生活するようになってから
12年、24歳になったノラ(グレタ・リー)は単身で
ニューヨークに渡り、新進気鋭の劇作家として注目
されつつあった。
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映画のプロモーションなどを見ていると舘や柴田、浅野、仲村らの仲の良さが
垣間見え、微笑ましく思う。
38年の長寿シリーズになるとは出演者も観客も思わなかっただろうが、
円熟した大人たちが生き生きと楽しそうに活躍している姿はいいものだ。
いつでも帰ってきてほしい!
バティモン5に住む、マリにルーツを持つ女性アビー
(アンタ・ディアウ)は、行政の怠慢な態度に苦しむ移民
たちを助けるために市役所のケアスタッフとして働いて
いる。
忘れられない人との再会を描く
共感必至の大人のラブストーリー
おそらく多くの人に、どんなに思い合っていても結ばれ
なかったり、壊れてしまったりした恋があるだろう。
時間や距離、価値観や生き方の違いなど、離れることに
なった理由はさまざまだろうが、その選択は果たして
正しかったのだろうか。
シリアスとコミカルなノリが共存する、日本の人気テレビドラマ
『世にも奇妙な物語』的なオムニバス作品だが、一部の
キャラクターが思わぬ形で出会っており、6編のエピソードが
さりげなく交錯しているのが本作の妙味。
エピソードによって良くも悪くも印象が変わる人々を見ていると、
表面からは計り知れない闇をもつ人間の怖さが感じられて、
背筋がヒンヤリと寒くなる。
SNS、ストーカー、孤独な都会人など、現代の社会問題を
絡めて、いびつな人間関係がもたらす異様な世界を描き
切っている。
腕利きのスタントマン、コルト・シーバース(ライアン・ゴズ
リング)は、アクションスターのトム・ライダー(アーロン・
テイラー=ジョンソン)の代役として数々のアクションを
こなしてきたプロ中のプロ。
しかし、フォールガイ(スタント用語で、高所から落下する)
で失敗してしまい、心身のダメージから業界を去る。
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ライリーは高校入学を控えたティーンエイジャーに成長し、ライリーの頭の中の感情たち、ヨロコビ、
カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリは絶妙なチームワークでライリーの幸せを守っていた。
アイスホッケーに打ち込むライリーは2人の親友と一緒に、憧れの選手ヴァレンティナがいる高校の
ホッケーチームのキャンプに参加する。
ところが、親友たちがその高校に行かないことを知ったライリーは高校生活が不安になってくる。
ケリーは不本意ながらも、〈偽〉の月面着陸シーンの撮影に向けて準備しなければならなくなる。
偽ものづくりに長けたケリーが世界中を欺く映像づくりに躊躇するのは、マジメでひたむきな
コールと心を通わせたから。
バリキャリでイケイケの表面とは裏腹に、心に寂しさを抱えたケリーを小気味よく颯爽と演じた
ヨハンソンがとても魅力的だ。
18ヵ月後、レストランの駐車係をしていたコルトはプロデュー
サーのゲイル(ハンナ・ワディンガム)の依頼で、シドニーで
撮影中のトムのアクション主演作『メタルストーム』で
スタントマンに復帰する。
その頃、ヨロコビが仕切る司令部に新たに“大人の感情”たちがやってくる。
最悪の未来を想像して必要以上に準備をするシンパイ、周囲の人を羨ましいと思ってしまうイイナー、
いつもモジモジしているハズカシ、退屈で無気力なダリィ。
シンパイに感情のコントロールを仕切られたライリーは、高校生活で独りぼっちにならないように
今までとは違う行動を取るようになる。
7月19日より全国ロードショー
ライター:能登春子
スリルと驚きと感動が詰まった〈偽り〉の
月面着陸ミッション
本作は山中監督の本格的な長編映画第1作となるが、
第77回カンヌ国際映画祭で監督週間に正式出品され、
女性監督として史上最年少となる
国際映画批評家連盟賞受賞の快挙を果たした。
注目の作品である。
映画のプロモーションでは
18年ぶりに来日したチェ・ジウ
無謀なフェイク月面着陸ミッションはリハーサルから、宇宙あるあるの
古典的なギャグ全開で大いに笑わせてくれる。
1957年、59歳のフェラーリ(アダム・サンドラー)は前年に
最愛の息子ディーノを亡くした喪失感を抱え、妻ラウラ
(ペネロペ・クルス)との夫婦関係は冷え切っていた。
実はフェラーリには愛する女性リナ(シャイリーン・
ウッドリー)がおり、2人の間には12歳になる男の子ピエロ
もいたのだ。
その頃フェラーリ社は、マセラティ社などの競合他社が
台頭し資金難から経営破綻の危機に陥っていた。
フェラーリは社運を賭け、イタリア全土1000マイル縦断の
公道レース〈ミッレミリア〉での優勝を目指し、5人の
レーサーを送り込む。
6月28日より全国ロードショー
ライター:能登春子
主人公はニューヨーク郊外のホスピスで暮らす女性サミラ(ルピタ・ニョンゴ)。
末期がんの彼女は自嘲気味に自分の運命を受け入れ、何事にも投げやりになっているように
見える。
そんな彼女を元気づけようとするホスピスのスタッフに誘われ、サミラは渋々とマンハッタンに
人形劇を観に出かける。
その時、謎の〈何か〉が飛来し次々と人々に襲い掛かり、マンハッタンはパニックになってしまう。
双子の中学生の姉妹を双子姉妹監督が描いているので、この作品には双子ならではの
双子あるあるシーンが沢山入っている。
食べ放題のレストランや映画鑑賞を1人分の料金で2人分楽しんだり、追試の試験を
代わってもらったりと双子であることを最大限に利用している。
だが、初恋はシェア出来ずに初の大喧嘩になってしまう。さて、この恋どうなる?
子どもたちを大切に思う健気でピュアなキャラクターたちの
姿は、忙しなく、世知辛い日常の中で疲弊した大人たちの
心に、癒しと潤いを与えてくれるだろう。
香川杏(河合優実)は、売春相手が薬物中毒で昏倒してしまったことをきっかけに、警察に連行
されてしまう。
杏の取り調べをしたベテラン刑事・多々羅(佐藤二朗)は、杏を自分が主催する薬物更生者の
自助グループ「サルベージ赤羽」に誘うが、杏は乗り気ではなかった。
ところが、ゴミ屋敷と化した自宅で杏に売春を強要する母・春美(河合青葉)と彼女に虐げられる
祖母・恵美子(広岡由里子)との生活に限界を感じ、多々羅を頼ることにする。
「サルベージ赤羽」に参加し、似たような経験を持つ人々の話しを聞くうちに心を開いていく杏。
福祉施設で働き始め、シェルターマンションで一人暮らしも始めた。
スーパースター・ジャッキー・チェン
50周年記念作品
初主演作『タイガー・プロジェクト ドラゴンへの道 序章』
から50年を経て、2024年で70歳を迎えたジャッキー・
チェン50周年記念作品。
一線を退いたベテランスタントマンが、あることをきっかけに
再び危険なスタントに挑む姿と、疎遠になっていた娘との
わだかまりか描かれる。
ぶっきら棒だが親身な多々羅、週刊誌記者の桐野(稲垣吾郎)も杏に温かく寄り添う。
そんな杏に、次々に予想外の出来事が起こる。
杏の境遇が悲惨すぎて、とても辛くなる。
絶望的な日々を乗り越え、少しずつ生きることに前向きになる杏を河合が繊細に演じている。
愁いを帯びた表情、たどたどしい物言いなどが特徴的な河合の演技はどこまでも自然で、
杏という女性が生きているようにしか見えない。
悲しい結末へと向かうエピソードはフィクションだというが、杏は身勝手な大人たちの欲望に
巻き込まれたように見える。
生きたくても生き抜くことができなかった杏を思うと、涙が止まらない。
数々のアクション作品に出演してきたジャッキー・チェン
がスタントマン役を演じるのは、これが初めて。
共演は、娘役に『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』
のリウ・ハオツン、『ポリスストーリー レジェンド』の
ユー・ロングァン、『MEG ザ・モンスターズ2』の
ウー・ジン、そして数々のジャッキー作品を監督
してきたスタンリー・トンが、映画監督役で出演して
いる。
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日本公開時には吹き替え版も上映され、ジャッキー・チェンの吹き替えを数多く担当し2023年3月末
をもって声優業引退を発表していた石丸博也が本作のために限定復帰し、吹き替えを担当した。
『君の名前で僕を呼んで』(’18年)のルカ・グァダニーノ監督がユニークなチャレンジ
を試み、“恋の三角関係”という使い古されたテーマを、斬新でパワフルなラブ
ミステリーに仕上げた。
タシを演じるのは、『DUNE 砂の惑星』で勇敢な女性戦士を演じたゼンデイヤ。
整った美貌とスレンダーなスタイルが本当に魅力的で、小悪魔タシに軽やかに息を
吹き込んだ。
しかし、『ふてほど』でのコミカルな河合の姿に惹かれた人は、あまりの違いに衝撃を受けるだろう。
河合が演じるのは実在した女性をモチーフにした21歳の女性・杏(あん)。
2020年春、未知のウイルズによる未曾有の混乱が始まろうとする中、自死してしまったという。
薬物から更生し、新たな人生を生き始めていたにもかかわらず・・・。
女性の自死事件を扱った小さな新聞記事を読んだ今井悠監督が、〈今、伝えるべき物語〉と感じ,
担当記者への取材で得た事実から着想し、脚本化。
不遇な過去から抜け出し、幸せをつかもうとした女性の魂の叫びをスクリーンに焼き付けた。
ライター:木香圭介
5月31日より全国ロードショー
かつて香港映画界伝説のスタントマンと言われたルオ・ジーロン。
現在は第一線から退き、愛馬のチートゥとともに撮影所にやって来る観光客相手に日銭を稼いで
暮らしている。
だが、債務トラブルをきっかけにチートゥが競売にかけられることとなったルオは、苦肉の策で
遠縁になっていた法学部の学生である一人娘のシャオバオに助けを求める。
そんなルオに愛馬との共演というスタントのオファーが舞い込んでくる。
年齢的にも危険をともなう撮影だったが、ルオはスタントマンというプライドを掛けて危険なシーンに
挑戦していく。
5月24日よりロードショー
[5月19日アップ]
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2人が横浜のふ頭で横浜の風景を懐かしんでいる頃、横浜で香港在住の日本人弁護士が
何者かに殺される。
事件に引っ掛かりを感じた鷹山はふ頭で見かけた香港人、リウ・フェイロン(岸谷吾郎)を訪ねる。
フェイロンにはステラ・リー(吉瀬美智子)というビジネスパートナーがいた。
2023年度の第75回カンヌ国際映画祭で、カメラドール特別賞を受賞した
『PLAN75』の制作スタッフが再結集。
社会の片隅で起こっている悲しい現実に光を当てた社会派ドラマである。
監督は、「モフれる愛」のラリー・ヤン。
子供の頃からジャッキーのファンで、主人公はジャッキー
をイメージして脚本を執筆した。
離婚や仕事の悩みを抱えるリン、友人を思うあまりリンとの家庭を疎かにしてしまったチュアンなど、
うまくいかないことがありつつも、何とか前を向いて生きようとする人々に共感してしまう。
「いるいる」と思えるキャラクターや、「あるある」と思えるエピソードの数々に自然に引き込まれる。
19歳の時に自主制作した初監督作『あみこ』(’17年)
が世界的な評価を得た山中瑶子監督と、昭和の不良
少女を茶目っ気たっぷりに演じたテレビドラマ『不適切
にもほどがある』で大ブレイクを果たす前から、数々の
映画やドラマで鮮烈な印象を残してきた女優・河合優実。
新時代の表現者として独特の存在感を放つ20代の2人の
女性が共鳴し合い、混とんとした現代を迷いながら生きる
人々に向け、驚くべき物語を生み出した。
迷いながらも何とかたどり着いた常連客の家で、アールイが心を込めて散髪を施す姿が清々しい。
現実の痛みを受け入れ、自分にできる精いっぱいなことをやる。
そんな人としてあるべき姿が丁寧に描かれ、しみじみと心に沁みる。
アールイが帰る家には、「本日公休」の理由を知らなかった3人の子どもたちがアールイを心配
して待っている。
誰かのために行動した母の姿は訳ありな子どもたちを笑顔にし、家族の絆をより深めていく。
アールイを演じた名優ルー・シャオフェンは本作で22年ぶりに俳優業に
復帰し、映画主演は24年ぶりとなる。
そして、静かな存在感のある演技で第25回台北電影奨最優秀女優賞に
輝いた。
台湾の俊英フー・ティエンユー監督が自身の母親を元に脚本を書き上げ、
台中にある実家の理髪店で撮影を敢行し、3年の歳月を経て完成された。
監督のひたむきで優しい思いが込められた作品は多くの人の心に響くはずだ。
東京の片隅で暮らす21歳の女性カナ(河合優実)は、
元クラスメイトが自殺しても真剣味がなく、ホストクラブで
気晴らしし、同棲相手がいても刺激を求めて浮気し、美容
脱毛サロンの仕事もあまりやる気がなさそう。
楽しそうに笑っていても心の中は虚無感でいっぱい。
世の中にも自分の人生にも退屈しきり、どこにもやり場の
ない感情を抱えながら毎日を生きている。
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一方、デートアプリでマッチングした相手とカフェで待ち合わせたヒョンス(イ・ユミ)の前に
意外な人物が現れる。
4日間の間に、6人の主人公がそれぞれ経験する恐怖の出来事が6編のオムニバス形式で
描かれる。
4日間の時系列はバラバラで、トップバッターのチェ・ジウのエピソードは2日目の出来事に
なっている。
8月16日より全国ロードショー
ライター:能登春子
アクションスタントマンへの愛にあふれた
ライアン・ゴズリング主演の痛快アクション映画
監督は『ジョン・ウィッグ』シリーズや『デッドプール2』など、アクション映画監督として
注目を集めるデヴィッド・リーチ。
元スタントマンの経歴を持つリーチ監督は、本作に20年間にわたるスタントマン時代を含め、
自らが生きてきた世界〈映画〉への愛をたっぷり込めている。
裏方のスタントマンの活躍やアクション映画製作の舞台裏、そして奇想天外なアクションシーン
など、映画好きならすべてが興味深く楽しめるだろう。
「喜び」「悲しみ」「怒り」「嫌い」「恐れ」など、
日々沸き起こる感情は一体どこから来ているのだろう?
そんな純粋な疑問から生まれたような愛らしい作品
『インサイド・ヘッド』は、小学生の少女ライリーに備わる
“感情たち”の奮闘を描いた物語だった。
親への反抗や親友たちへの裏切り、先輩たちへの媚びへつらいなど、新しい環境でうまくやって
いこうと必死なライリーは自分を見失ってしまう。
けれど、このライリーの心の動きに思い当たる人も多いのでは。
“楽しく、幸せに過ごしたい”と願うとき、何を考え、どのように行動したらいいのか。
〈性格の島〉や〈イマジネーションランド〉、〈信念の泉〉、〈未必の保管庫〉など、さまざまな世界が
構築されたライリーの頭の中を駆け巡った感情たちが見つけた答えは、悩みを抱えた人々の
心に響くのではないだろうか。
1969年7月20日、世界中にテレビで生中継された
アメリカのアポロ11号による人類初の月面着陸の
映像は〈リアル〉なのか、〈フェイク〉なのか?
月への夢を掻き立てるロマンチックなタイトルを冠した
本作は、アポロ11号の月面着陸疑惑をユーモア
たっぷりに味付けした、爽快なエンターテイメント作品。
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監督はアル・パチーノとロバート・デ・ニーロが共演したアクション大作『ヒート』(’95年)、
トム・クルーズ主演『コラテラル』(’04年)など、渋い男のドラマに定評のあるマイケル・マン。
本作では、家庭と会社に問題を抱えながらも時には非情にも映る厳しさで自身の理想を貫く
孤高の男フェラーリを陰影深く描き出している。
音が出ないかハラハラドキドキしっ放し
斬新な設定が見事な人気シリーズ第3弾
ニューヨーク・マンハッタンに隕石と共に謎の〈何か〉と
呼ばれるクリーチャーが多数飛来する。
音を聞きつけるとすぐさま現れ、襲いかかるクリーチャー
から逃れるために、人々は物音を立てず、声を出さず、
ただ静かに過ごし、脱出の時を待つしかなかった。
そこは、まさに〈クワイエット・プレイス〉。
アクション映画のヒットメーカー、マイケル・ベイが2018年
に製作し、スマッシュヒットを記録したホラー映画
『クワイエット・プレイス』シリーズの3作目。
クリーチャーが飛来した1日目の出来事を描いた本作は、
スリリングなホラー映画というよりはクリーチャーから
逃げ回るパニックアクション映画となったが、〈静かに〉
することが抜群の緊張感を生み出している。
恐ろしいクリーチャーは水で死んでしまうことがわかり、人々は港へ向かい、フェリーで逃げよう
とする。
しかし、サミラだけは別の方向へ向かう。
元々、死ぬ運命を覚悟していたサミラがどのような行動を取るのか。
肉体ではなく、精神的に強いアクションの主人公は新鮮だ。
『それでも夜は明ける』(’13年)で、米アカデミー賞助演女優賞を獲得したルピタ・ニョンゴの
出演はとても意外な気がしたが、静かなアクションを深みのある演技で盛り上げている。
そして、本作の最大の面白さは、孤独なサラミの心に寄り添う唯一の家族に〈猫〉を起用
したこと。
サラミは飼い猫フロドをマンハッタンに連れてきていたが、猫が静かにすることなどできるの
だろうか?
自由気ままに動き回るフロドにハラハラドキドキさせられ、心配でたまらない。
かわいくて、賢くて、健気なフロドの活躍に注目だ。
初恋に揺れる思春期の
双子の姉妹を描いたラブストーリー
一卵性双生児として生まれ、ずっと一緒に生きてきた
中学生のユーとミー。
合わせ鏡のようにそっくりな2人は、どんなことでも
シェアして隠し事もせずに同じ人生を歩んできた。
1999年の夏、家庭の事情で田舎の祖母の家に身を
寄せることになった2人は、マークという魅力的な少年と
出会う。
シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れる
ユーとミー。
二人の忘れられない夏が始まる…。
原題の『IF』とは、〈イマジナリー・フレンド(イフ)〉、日本語に訳すと〈空想の友だち〉のこと。
子どもたちが心の中で生み出した友だちのことだという。
頼る大人がいなくて、不安な時、寂しい時や辛い時、子どもたちの小さな心に寄り添い、
救ってくれたイフたちは、大人になると見えなくなってしまう。
そして、居場所を失ったイフたちは彼らを思ってくれる新しい子どもを見つけないと消えてしまう
という。
テニスコートが恋の修羅場と化す
三角関係の行方をミステリアスに描く
ライター:能登春子
テニスのラリーのようなスピード感あふれる展開と、心の読めないミステリアスなキャラクターで、
物語の世界にぐいぐい引き込まれる。
出会ってから13年。
共にトッププレイヤーをめざしながらも辛酸をなめた人生を歩む3人が最後の望みを
かけた決勝戦で、あることが明らかになる終盤。
ファイナルセットの攻防はキャラクターたちの複雑な思いが分かるだけに、本当に
ハラハラさせられる。
さまざまな映画や音楽をオマージュした小ネタがちりばめられているのも
ニヤリとしてしまう。
ゲイルの元カノで『メタルストーム』の監督に抜擢されたジョディを演じるのは、
エミリー・ブラント。
『オッペンハイマー』(’23年)で米アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた
実力派女優のエミリーはゴズリングとともにコミカルでチャーミングな姿を見せ、
はちゃめちゃなアクションシーンもかっこよく決めている。
人間の頭の中をさまざまな感情が駆け巡るファンタジックな
冒険の末に、少女はもちろん、感情たちも気付き(前作では、
〈悲しみ〉の意味)を得るストーリーは、理屈では割り切れない
感情の真理を追究しており、深くて心に沁みるメッセージに
共感し、感動した人も多いのではないだろうか。
9年ぶりとなる待望の続編では〈思春期〉に舞台を移し、
ちょっぴり大人になったライリーと感情たちの成長が巧みな
ストーリーで綴られる。
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やり手のケリーは、実直なNASAの発射責任者コール(チャニング・テイタム)が反発する中、
NASAのスタッフにそっくりな俳優をメディアに登場させたり、宇宙事業の予算削減を画策する
議員たちを巧みな話術で味方に付けたりと、“ウソ”を交えた戦略で実現が危ぶまれた月面着陸
プロジェクトを活気づける。
そうして、世界中からアポロ11号への期待が高まる中、「絶対に月面着陸を失敗できない」
アメリカ政府は、テレビの生中継では月面に見立てたスタジオの映像を流すことに決定。
言わずと知れたイタリアの高級スポーツカーメーカー、
フェラーリ。
その創始者、エンツォ・フェラーリとはどんな人物だった
のか。歴史に名を刻む人の例にもれず、フェラーリも
波乱万丈の人生を送ったようだが、本作では1957年に
フェラーリの身に起こった衝撃的な出来事を通し、
フェラーリの実像に迫っている。
知られざるフェラーリの深い闇に迫る
マイケル・マン監督らしい渋い人間ドラマ
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騒々しくド派手なことで盛り上がるパニックアクション映画の定石を覆した斬新な設定が
見事にハマり、まるでその場にいるかのように息を詰めて見入ってしまうだろう。
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ドラマやミュージックビデオの監督として活躍してきたワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット
姉妹が長編初メガホンをとり、ユーとミーの二役を演じるティティヤー・ジラポーンシンは、
『女神の継承』のバンジョン・ピサンタナクーン監督が知人カメラマンが撮影した写真を偶然
見つけたことから大抜擢された期待の新星。
映画撮影時は17歳で演技経験ゼロだったにも関わらず、双子姉妹の難役を見事に演じ切り、
タイ映画監督協会賞で最優秀新人女優賞を受賞している。
また彼女は今年、19際の若さでCHANELのタイアンバサダーにも任命された。
架空のキャラクターと実写を融合した心温まるファンタジー
映画。
大きな紫色の“モフモフ”したキャラクター、ブルーを始め、
たくさんのユーモラスなキャラクターが登場するため、
子どもが楽しむための映画だと思われがちだが、大人の
方にぜひ観ていただきたい。
ミッレミリアのレースには驚くべき事態が待ち受けるのだが、会社の命運をかけたフェラーリや、
夫の裏切りを知ったラウラ、そして自らの命を賭けたレーサーたちの切なる思いを丁寧に盛り込み、
エモーショナルでドラマチックなシーンに仕上げたマイケル・マン監督の演出手腕が冴えわたって
いる。
この作品の挿入歌に 山口淑子(李香蘭)の夜来香(イェ・ライ・シャン)が使われている。
タイで10年前にリリースされ、オリジナルよりもテンポアップで途中にラップも
入っているアレンジ曲。
今回使用されて、リバイバルヒットしている。
幼い頃、大好きな母を亡くした12歳の少女ビー(ケイリー・
フレミング)は、幼い頃に暮らしていたおばあちゃん
(フィオナ・ショウ)の家へ戻ってくる。
それは、父(ジョン・クラシンスキー)が入院したためだ。
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10代の頃、同じテニスアカデミーで学んでいたパトリックとアートは18歳の時、人気と実力を
兼ね備え、テニス界で注目を集めていた女子プレイヤーのタシ(ゼンデイヤ)と出会う。
魅力的なタシはパトリックとアートを挑発し、2人はすっかりタシの虜になってしまう。
タシをめぐり恋のライバルともなった2人は、やがてタシが怪我でテニスプレイヤーとしての道を
閉ざされたとき、両極端の人生を歩むことになる。
闘志をむき出しにして勝ち上がったパトリックは決勝戦でアートと対戦することに。
互いが必死に戦う白熱したゲーム展開は、優勝のためばかりではなく、過去の因縁が2人に特別な
力を与えているようだ。
一体、彼らの間に何があったのか。
現在の試合シーンと、3人の過去のエピソードを交互に見せながら、その謎をひもといていく。
6月7日より全国公開
ライター:能登春子
自然体の実力派、河合優実の最新主演映画
悲しい現実から学ぶべき、骨太の社会派ドラマ
今年1〜3月まで放送され、生きづらい令和に生きる人々に
笑いと希望を与え大反響を呼んだ『不適切にもほどがある!』
(24年)で、尖ってるけど純情な昭和のヤンキー女子校生・
純子を演じて、注目を集めた河合優実。
2019年のデビュー以来、『サマーフィルムにのって』
『由宇子の天秤』(ともに21年)で、数々の新人賞を受賞
した後、2022年には『PLAN75』を始め8本の映画に出演
するなど、映画界では、すでに実力派の若手女優である。
2023年制作/122分/G/タイ 原題:You & Me
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〈もしお父さんまでいなくなったら〉という不安な心を隠して大人ぶるビーは、ある日、アパートの
上階の部屋に入る不思議な女の子〈ダンシング・バタフライ〉を見かける。
その部屋を訪ねたビーは、謎の男カル(ライアン・レイノルズ)に出会う。
6月7日より全国ロードショー
オリジナル版では、ブルーの声をスティーブ・カレルが演じている。
ほかにもイフの声優にはジョージ・クルーニーやマット・デイモン、エミリー・ブラントなどの
ハリウッドスターが参加し、遊び心いっぱいの映画を楽しく盛り上げている。
感情たちは激しく衝突しながらも、ライリーの幸せのために奮闘する。
ポジティブだけど天然なヨロコビ、内気で泣き虫だけど仲間思いの
カナシミなど、おなじみのキャラクターに加え、新キャラクターも
表情豊かで愛らしい。
特に、本作ではヒール役となってしまったシンパイは、日本語版の
声優をした多部未華子のかわいい声と演技力で、とてもいじらしい
キャラクターになっている。
実は「月面を再現したスタジオでの撮影が予定されていた」
という大胆な設定のもと、スリルと驚きに満ちた極秘ミッション
の顛末が描かれる。
劇作家として活躍するセリーヌ・ソンの長編映画監督デビュー作。
脚本は彼女自身の体験をベースにしているという。
そんなパーソナルで大切な思いをありのままに表現した本作は、
誰かを心の奥深くで思う尊さを静かに伝えてくれる。
たとえ失恋しても、忘れられないほど好きな人に出会えた人生は
豊かだと思う。誰もが映画の主人公。
そんなシャレた気分に浸れる大人のラブストーリーだ。
オリジナル脚本を手がけたのは、2023年バラエティ誌の「注目すべき
脚本家10人」に選ばれた女流脚本家ローズ・ギルロイ。
本作が映画脚本デビュー作となる。
根強く残る都市伝説をうまく生かし、〈偽りからの脱却〉を軽やかに伝えた
ストーリーは楽しくて、胸を打つものがある。
捜査課長に出世した町田透役の仲村トオル、「落としのナカ」としてひょうひょうとした演技で
笑わせたベンガルなど、懐かしい仲間たちも登場。
ブッ飛びキャラの薫を演じた浅野温子は完全なコメディリリーフに徹している。
受けを狙った演出は行き過ぎたきらいがあるが、浅野はサービス精神たっぷりに演じ切っている。
バティモン5とは、パリ郊外にある労働者階級の移民たち
が暮らす大規模団地群の一画のこと。
貧困や差別などの問題に苦しむ移民労働者の家族たちは、
〈排除された者たちの地帯〉を語源とする〈バンリュー〉と
呼ばれる郊外にある、老朽化した劣悪な環境の団地に
住むしかなかったが、行政は治安の悪いエリアの再開発
を進め、老朽化した団地の取り壊しを進めていた。
ライター:能登春子
4月5日よりロードショー
それから12年、36歳になった2人は、ノラが住むニューヨークでついに24年ぶりに再会することに。
しかし、ノラには劇作家の夫アーサー(ジョン・マガロ)がいた。
今年の米アカデミー賞で、作品賞と脚本賞にノミネートされた。
どんなことでもトップの指示に従うしかない役人たちも含めて、まるで当事者に
なったかのように映画の世界に引き込まれ、深く考えさせられる。
前作『レ・ミゼラブル』(’19年)でもバンリューの問題を取り上げ、高い評価を
得たラジ・リ監督がどこの国にも共通する社会問題を突きつけた力作だ。
24年にわたる秘めた恋の結末がニューヨークを舞台に描かれる。自由の女神へ向かうフェリーや、
ブルックリンのレトロな回転木馬など、ワクワクするような観光名所を巡りながら、2人は近況報告
や思い出話に花を咲かせる。
けれど、言いたい言葉がのどに使えているような2人の微妙なやり取りにドキドキしてしまう。
クライマックスは、クラシックなバーを舞台にした、ノラ、ヘソン、アーサー3人による、もどかしい
ばかりの会話劇。
「私たちはどんな関係に見えるかしら?」といたずらっぽく話すノラに対し、2人の男たちは複雑な
心境に違いない。
既婚のノラが初恋のヘソンとどうなるのか? ドラマチックなラブストーリーが期待できる
シチュエーションだが、おそらく現実にはノラとヘソンのような結末がふさわしく、とても共感できる。