ライター:能登春子
9月29日より全国ロードショー
[9月17日アップ]
舞台は大阪。
ネリ(安藤サクラ)は特殊詐欺グループの「名簿屋」・高城
(生瀬勝久)の下で、通称・「三塁コーチ」として特殊詐欺
の中心を担っている。
左耳が聴こえないことや、元ヤクザの曼陀羅(宇崎竜童)や
博識ながら受け子として生きる通称・教授(大場泰正)など、
訳ありな貧困層が集うスラム街のアパートに住むネリには、
特殊な事情があるようだ。
ところがジョーは仕事に失敗してしまう。
そうして無鉄砲なジョーが思いついたのは、大金を持つ高城を襲うことだった。
オフィシャルサイト
 
物語の中心になるのは、どんどんと悪の道へと突き進むネリとジョーの行く末。
脚本も手がけた原田監督は、原作では男性だった主人公を女性へと変更。
幼い頃から壮絶な経験をしてきたネリを通し、傲慢な強者がはびこる歪んだ現代社会を懸命に
生きようとする弱者の“あがき”を鮮やかに描いてみせた。
裏組織を相手に、物おじもせずに飄々と振舞うネリを安藤サクラが力強く演じている。
ネリを追う大金持ちの投資家・胡屋(渕上泰史)を含めて、人の痛みが
分からないサイコパスなキャラクターたちがうごめく物語は本当に怖い。
https://www.bad-lands-movie.jp/
シネマプレイスがお届けするおすすめ映画レビューは独自の視点で新作映画をご紹介しています
社会の底辺に生きる、“持たざる者”が企てる
リアルでスリリングな、とても怖い犯罪劇
シネマプレイスはあんか通販とともに、楽しい情報をお届けいたします。
特殊詐欺グループの内実をリアルに描いた黒川博行
原作の傑作クライムサスペンス小説『勁草』を、
『クライマーズ・ハイ』(’08年)、『燃えよ剣』(’21年)
など、骨太なドラマに定評のある名匠・原田眞人監督が
映画化。
ある日、高齢者の女性の特殊詐欺に失敗した高城とネリは、大阪府警の佐竹刑事(吉原光夫)らに
追われることに。
そんなとき、ネリの血のつながらない弟・ジョー(山田涼介)がネリの前に現れる。
ネリは犯罪歴のあるジョーを使ってくれるよう高城に頼むが、手っ取り早くお金を稼ぎたいジョーは、
裏社会での黒い仕事を仲介する林田(サリngROCK)から殺しの仕事を引き受ける。
今の世の中、誰もが何の因果で社会の底辺へと転落するか分からない。
社会状況や人間関係が影響し、“普通”と思われる人が犯す物騒な事件が
増えている中、あまりに生々しく気持ちの滅入る題材ではあるが、
“正しく生きること”の大切さを痛感させる。
覚悟を持って、ぜひ観てほしい作品だ。

CINEMAライター 能登春子木香圭介/宮島一美/石倉ことこ
掲載リスト
 BAD LANDS
 GRANTULISMO
 こんにちは、母さん
 ミンナのウタ
 トランスフォーマー
 ヴァチカンのエクソシスト
 マルセル
 小説家の映画
 青いカフタンの仕立て屋
 カード・カウンター
 ウーマン・トーキング
 苦い涙
 TAR
 午前4時にパリの夜は明ける
 ヴイレッジ
 ザ・ホエール
 AIR
 ライル
 メグレと若い女の死
 長ぐつをはいたネコと9つの命
 フェイブルマンズ
 アラビアンナイト
 worth 命の値段

特殊詐欺グループの受け子のリーダーとして暗躍する
女性・ネリを主人公に、社会の最底辺へと転落した者が
たどり着く、裏社会の脅威と恐怖をまざまざと見せつける。
ライター:能登春子
9月16日より全国ロードショー
ゲーマーからプロのカーレーサーへの挑戦
本格的なカーレースシーンが楽しめる
ソニーのゲーム機、プレイステーションのドライビング
ゲームソフト「グランツーリスモ」は、本物さながらの
カーレースが体験でき、世界的な人気を集めている。
2008年、日産はリアルなドライビングテクニックが
必要な「グランツーリスモ」を巧みに操るトップゲイマー
にドライバーとしての素質を見い出し、彼らをプロの
カーレーサーとして育成するプログラム「GTアカデミー」
を開始した。
割烹着を着て、寡黙な父とともに稼業にいそしんでいた昔の母を知る昭夫にとり、福江の変化は
違和感しかない。
しかし、妻や娘、さらに昭夫を追って実家にやってきた木部などとの問題に対処する中で、昭夫は
母の存在に救われるようになる。
ライター:能登春子
8月11日より全国ロードショー
[8月20日アップ]
清水監督が共同脚本を手がけたストーリーは、やがて歌を愛する女子中学生の過去へと
たどり着き、壮絶なクライマックスが待ち受ける。
[7月9日アップ]
[8月27日アップ]
本作は、そんな無謀ともいえる「GTアカデミー」を経て、
現在カーレーサーとして活躍するヤン・マーデンボロー
をモデルに、ゲームの可能性を信じて夢を実現させた
男たちのドラマである。
ライター:能登春子
9月1日より全国ロードショー
[9月9日アップ]
一方、日産のマーケティング担当、ダニー(オーランド・ブルーム)は「GTアカデミー」の創設に
奔走し、かつて伝説的なドライバーだったエンジニアのジャック(デヴィッド・ハーバー)を指導者
として迎える。
昭和時代から日本の家族の姿を撮り続けてきた
山田洋次監督が、令和時代に贈る母と息子の物語。
東京の下町・向島を舞台に、ユーモアとペーソス
あふれる極上の人情喜劇が繰り広げられる。
ロンドンのティーンエイジャー、ヤン(アーチー・マデクウィ)は車が大好きでいつかドライバーに
なることを夢見ていた。
「グランツーリスモ」に明け暮れるヤンはかなりの腕前になっていたが、堅実な父親からは
「ゲームばかりしていないで現実を見ろ」とたしなめられる。
日本映画界の重鎮、山田洋次監督と
吉永小百合が贈る、癒しの人情喜劇
監督は異色のSFアクション映画『第9地区』(’09年)のニール・ブロムカンプ。
大企業の人事部長を務める神崎昭夫(大泉洋)は
頭の痛い日々を送っていた。
仕事ではリストラを推進する会社の意向に従わざるを
えず、リストラ対象者の友人・木部(宮藤官九郎)から
逆恨みされてしまう。
また、家庭では離婚の危機にあった。
ある日、大学生の娘・舞(永野芽郁)を連れて出ていった妻から昭夫へ「舞が来ていないか?」
と連絡がくる。
舞の行方を捜して、母・福江(吉永小百合)が1人で暮らす向島の実家を訪れた昭夫は、そこで
舞を見つける。
「家に帰りたくない」という舞はしばらく福江の家で暮らすことになったため、昭夫も度々、
福江の元を訪れるようになる。
オフィシャルサイト
カセットテープという昭和的なモチーフが令和の時代に再び人気を博しているという。
“呪いのカセットテープ”という使い尽くされた恐怖アイテムの破壊力は健在だ。
古びたカセットテープから流れるノイズまじりの不安定な声や歌は、過去の怨念を想起
させるのにはぴったりで、やっぱり怖い。
オフィシャルサイト
仕事も家庭も思い通りに行かない昭夫とは対照的に、福江はなんだか生き生きとしている。
髪を明るく染め、艶やかなファッションに身を包み、ホームレスを支援するボランティア団体で
仲間たちと楽しそうに活動している。
https://www.gt-movie.jp/
悩める中間管理職の昭夫を中心に、決して良いことばかりではない人生をがんばって生きようと
している普通の人々の姿が温かな笑いとともに描かれる。
清水監督は緩急を織り交ぜた恐怖演出で、終始ドキッとさせられる。
俳優として活躍している白濱や片寄のほかにも、関口メンディーや佐野玲於などが
清水監督の創り出す恐怖の世界の中で、新たな顔を見せている。
1994年、ニューヨーク・ブルックリン。
母親と病弱な弟と暮らす元陸軍二等兵の青年ノア
(アンソニー・ラモス)は、ひょんなことからポルシェに
トランスフォームしていたオーボットの戦士“ミラージュ”
と出会う。
ライター:能登春子
7月14日より全国ロードショー
福江が生き生きとしているのは、恋をしているから。
ボランティア仲間の牧師・荻生(寺尾聰)に会うだけでうれしそうな福江のかわいらしいこと。
少女のように恋にときめく一方で、悩める家族たちにそっと寄り添う温かい母親の姿を体現する
福江を、吉永小百合が軽やかに演じている。
吉永のボーイッシュなショートカットがとても新鮮だ。
“呪いのカセットテープ”から流れる歌とは?
GENERATIONS主演の本格ジャパニーズホラー
ジャパニーズホラーの巨匠・清水崇監督の最新作は、
人気ボーカルダンスグループ・GENERATIONSが
本人役で主演するホラー映画。
不気味な歌が吹き込まれた1本のカセットテープを
聞いたGENERATIONSのメンバーたちが恐怖の
出来事に巻き込まれてしまう。
オフィシャルサイト
そうして、ノアとエレーナは地球を守るために戦うトランスフォーマーたちの壮大な戦いに巻き込まれて
いく。
ヴァチカンのチーフ・エクソシストとして、2016年に
91歳で亡くなるまで、数万回もの〈悪魔祓い〉を行った
ガブリエーレ・アモルト神父。
その体験を著し、ベストセラーを記録した回顧録
『エクソシストは語る』をベースにした、本格派の
オカルト・ホラー映画だ。
オフィシャルサイト
おばあちゃんと2人だけの生活は大変だが、マルセルたちは創意工夫して穏やかに暮らしていた。
そんな時、映像クリエイターのディーンがマルセルたちの家に引っ越してくる。
そして、マルセルの生活を動画にしてYouTubeへの投稿を始める。
すると、おしゃべりでキュートなマルセルの動画は大バズリ。
そこでマルセルは動画で仲間たちの捜索を呼びかけることにする。
ライター:木香圭介
6月30日より全国ロードショー
ベルリン国際映画祭銀熊賞
3年連続受賞の快挙!!
車からロボットへ変形するトランスフォームシーンは相変わらず小気味よく、カッコイイ。
さまざまな特徴を備えたロボットたちが縦横無尽に暴れ回る、スケールの大きなアクション
シーンが見どころだが、本シリーズが2007年の1作目以来、16年にわたり愛されているのは、
心を持つロボットたちが魅力的だからだろう。
ゲーマーからカーレーサーになったというのは驚きの事実である。
父親の冷たい目、仲間たちとの競争、厳しいジャックとの友情、
デビュー戦での事故、そして、ル・マンへの挑戦。
ヤンが苦悩しながらもレーサーの夢に向かって挑戦するストーリーは
ちょっと薄味だが、レースシーンこそ本作の主役。
本物のレースカーを、本物のドライバーたちが運転するレースシーンは
迫力満点だ。
スタントドライバーの中には、本作のモデルとなったヤン・マーデンボロー
もおり、自身のカーレースシーンのスタントをしている。
その後、ヤンは「GTアカデミー」の地区予選大会を1位で通過し、トッププレイヤー10人が
集められた「GTアカデミー」への参加を果たす。
人生は山あり、谷あり。
良いことばかりじゃないけれど、それでも寄り添ってくれる家族や仲間たちがいたら
幸せに違いないと思わせてくれる。
本作は、世代を超えて人々を笑顔にし、元気づけてくれるだろう。
GENERATIONSのマネージャー、角田凛(早見あかり)は、極秘裏に小森を探しだすために
探偵の権田(マキタスポーツ)に調査を依頼する。
権田に与えられた調査期間はライブ開催までのわずか3日間。
権田は他のメンバーたちが宿泊するホテルに滞在し、白濱亜嵐や片寄涼太らメンバーたちから
小森の失踪前の様子を聞き出す。
すると、メンバーたちはそれぞれ不審な行動を取り始める。
さまざまなテクノロジー機器にトランスフォーム(変形)
できるロボット生命体“トランスフォーマー”たちの
戦いを描く、大人気アクションエンターテイメント映画
シリーズ7作目。
これまでは車にトランスフォームするロボット戦士
“オートボット”の活躍が描かれていたが、本作では
ロボットからゴリラやチーターなどの動物にトランス
フォームする“ビースト”が新たに登場。
南米・ジャングルを舞台に、オートボットを助け宇宙最悪
の敵と戦うその勇姿は、まさに“ビースト覚醒”だ。
オフィシャルサイト
ホラー映画初主演のラッセル・クロウは、まるで晩年のショーン・コネリーのような風貌で、
悪魔にも動じない威厳あるアモルト神父を大熱演。
悪魔との激しいアクションシーンでも重厚感のある演技を披露している。
https://movies.shochiku.co.jp/konnichiha-kasan/
監督と脚本を手がけたディーンは本人役で出演しており、共同脚本のジェニー・スレイトは
マルセルの声を演じている。あどけないマルセルの声もかわいらしくて、胸がキュンとする。
強い絆で結ばれた夫婦の切ない愛の行方
神秘の国モロッコから届いた大人のラブストーリー
オフィシャルサイト
長年、男性映画監督を主人公にした作品を作り続けてきたホン・サンス監督は、キム・ミニと
出会ってから、主人公を女性にした作品に変わった。
今回は女性小説家が主人公だけど、いきなり短編映画が製作したいと言い出して、本当に
映画を作ってしまうという物語。
なので、以前の映画監督を主人公にしたパターンに戻ってしまった。
https://marcel-movie.asmik-ace.co.jp/
『60ミニッツ』は実在する人気ドキュメンタリー番組で、マルセルも仲間たちと観ていた大好きな
番組という設定。
『60ミニッツ』の実際のアンカー、レスリー・ストールが本人役で出演する遊び心ある展開には、
マルセル、そして観る者にも人生で大切なことを教えてくれる驚きと感動のクライマックスが
待ち受ける。
前作『あなたの顔の前に』で主演したイ・ヘヨンが
小説家ジュニを演じ、ホン監督の公私に渡る
パートナーのキム・ミニが女優ギルスを演じる。
共演は、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、
キ・ジュボンらとホン監督作の常連俳優が顔を
揃えた。
ライター:能登春子
6月16日より全国ロードショー
不気味な修道院は恐怖の舞台に打ってつけで、何が起こるか分からないハラハラドキドキの
展開が堪能できる。
最も驚かされるのは、悪魔に憑りつかれるヘンリーを演じた12歳の子役ピーター・デソウザ=
フェオニー。
特殊メイクを施し、しゃがれたうなり声を上げ、恐ろしい悪魔を見事に演じ切っている。
https://tf-movie.jp/
〈悪魔祓い〉がヴァチカンの仕事として現代まで実際に行われていたことに驚かされるが、
本作ではカトリック教会が封印してきた秘密や、従軍経験のあるアモルト神父の過去、
さらにアモルトに協力するトーマス神父(ダニエル・ゾヴァッド)が経験した悲しい恋など、
ミステリー要素を交えて悪魔の存在にリアリティをもたらそうとしている。
植木鉢の中に置かれている貝殻を主人公に、映像
クリエイターのディーン・フライシャー・キャンプが
2010~14年にかけてYouTubeに公開した短編作品は、
累計再生回数5000万回を記録。
愛らしくて、好奇心旺盛で、聡明で、ハートフルな
マルセルの愛と勇気の物語が長編映画になって登場
した。
今年は、一世を風靡した映画『エクソシスト』(’73年)の公開から50年。
不思議な魔力がみなぎるオカルト・ホラーはやっぱり面白い!
新たなエクソシスト伝説に期待したい。
マルセルは民泊ができる一軒家で、おばあちゃんのコニーと暮らしている。
以前は家族や仲間たちと賑やかに暮らしていたが、ある日、2人を残して、みんないなくなって
しまったのだ。
[6月25日アップ]
https://www.vatican-exorcist.j
アクション映画ファンには、やっぱりたまらないシリーズだ。
IMAXでの上映もあるので、異次元のロボットたちの戦いを思い切り楽しんでほしい。
古びた修道院に住み始めた一家は数々の異変に見舞われ、ヘンリーが悪魔に憑りつかれて
しまう。
一家を救うためアモルト神父(ラッセル・クロウ)はローマ教皇から直接依頼を受け、修道院へ
向かう。
小さな貝が堂々のスクリーンデビュー!
大きな世界へ飛び出す勇気をくれる感動作
マルセルは体長2.5センチの小さな貝。
ちょこんと付いた足にきちんと靴を履いて、
ちょこちょこ歩く姿はたまらなくかわいく、
マルセルの一挙手一投足に目を細めて
見入ってしまう。
やがてYouTubeの視聴者が家に押し掛けるようになり、コニーとの生活が脅かされたマルセルは
YouTubeの配信を止めるが、なんとテレビ番組『60ミニッツ』から、マルセルに出演オファーが入る。
2022年・第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞
(審査員大賞)を受賞した監督27作品目は
モノクロ映画になっている。
[6月18日アップ]
実はハリムは同性愛者だが、ミナとハリムは強い愛と絆で結ばれていることがわかる。
病気で苦しむミナを献身的に支えるハリムに対し、ミナはユーセフとの愛を後押しする。
死期が迫る中、ハリムの幸せを心から願う健気なミナの姿に胸が熱くなる。
マーティン・スコセッシ監督の傑作ドラマ
『タクシードライバー』(’76年)の脚本家
として注目を集めたポール・シュレイダーは、
以降、『アメリカン・ジゴロ』(’80年)、
『魂の行方』(’21年)など、脚本家兼監督
として活躍している。
オフィシャルサイト
しかし、1人の少女が寝室に忍び込む青年を発見したことから事態が動く。
青年は警察に逮捕されるが、2日間で保釈されることになっていた。
このコミュニティーでは少女たちへの性暴力は公然と行われていたのだ。
GENERATIONSのライブシーンもあり、ファンはとっても楽しめるだろうが、本格派の
ホラー映画としても見応えある。暑い夏、ゾクッとしたい人はぜひ映画館へ!
一方、熱心な博物館の研究者エレーナ(ドミニク・フィッシュバック)は異星の秘密につながる発見を
したことから、地球破壊を企む宇宙最悪の災い“ユニクロン”から狙われてしまう。
ラッセル・クロウがオカルト・ホラーに挑む
実在のエクソシストと悪魔との壮絶な闘い
https://movies.shochiku.co.jp/minnanouta/
大泉洋が落ち着きのある演技をする一方で、木部を演じる宮藤官九郎が騒動を巻き起こす
コメディリリーフとして作品を盛り上げている。
昭夫も木部も共感必至のキャラクターとなっているのは、さまざまな人間の機微を捉えてきた
山田監督の手練れの演出によるものだろう。
文明の発達とともによりよい時代になるはずが、戦争、不景気、物価高、SNSでの誹謗中傷、
コンプラの強化など、生き辛さも一層増していくような現代。昔ながらの人情が息づく下町での、
ささやかな物語は心に深く沁みわたる。
それにしても、御年91歳の山田洋次監督の創り出す作品世界は本当に貴重である、
と再認識させられる。
ラジオのパーソナリティーを務めるGENERATIONSの
メンバー、小森隼は30年前に届いたまま放置されていた
『ミンナのウタ』と書かれたカセットテープを発見する。
収録後、そのカセットテープが気になった小森は
カセットテープを再生する。
以来、何かに怯えるようになった小森がこつ然と姿を
消してしまう。
ライター:能登春子
8月4日より全国ロードショー
新たなトランスフォーマーたちが大活躍
パワーアップしたアクションシーンが楽しい!
[8月6日アップ]
正義の味方オートボットに加え、新たに登場した勇敢なビースト勢力“マクシマル”の戦士たちは
とても渋くて、カッコイイ。
新たな敵となる“テラーコン”との壮絶な戦いを描くアクションシーンでは、強いだけでなく、
仲間を思う優しさにあふれたトランスフォーマーたちの姿に思わず胸が熱くなる。
1989年、夫を亡くしたシングルマザーのジュリア
(アレックス・エッソー)は、修復の仕事に携わるため
2人の子どもたちを連れて、スペインのサン・セバスチャン
修道院へやってくる。
[7月2日アップ]
ひっそり生きてきた小さな貝たちが大きな人間世界で経験する出来事がコミカルかつ、
エモーショナルに描かれる。
PC画面に映る自分に感動したり、ディーンとふざけあったり、家族を探しに車で街へ
繰り出したりと、マルセルにとって初めての人間社会は刺激的だが、ほろ苦さも感じる。
2人の女性アーティストの友愛と連帯を描いた、
ホン・サンス監督お馴染みの長回し会話劇。
オフィシャルサイト
ミナとハリムの日常が淡々と描写される。
2人が置かれた状況を知るために、かなり想像力を求められるが、映像が物語を語る、まさに
映画的な世界はシンプルでとても心地よい。
『タクシードライバー』のコンビが再び描く
アメリカの“闇”に傷つけられた男の狂気の
ドラマ
ひどい虐待が行われているであろう米国軍刑務所での不穏なシーンから映画は始まる。
そこで10年を過ごしたウィリアムは一体どんな男なのか? 
物静かながら、どこか狂気を感じさせるウィリアムの運命の旅路がクールなカードゲームシーン
とともに描かれる。
脚本・監督を手がけたのは、『死ぬまでにしたいこと』
(’02年)の女優サラ・ポーリー。
長編映画監督デビュー作『アウェイ・フロム・ハー 
君を想う』(’06年)など製作者としても豊かな才能を
発揮するポーリーの冷静な目が鋭く光っている。
ウィリアムを演じるのは『スター・ウォーズ』続三部作の主要キャラクターの1人、
ポー・ダメロン役で人気を集めたオスカー・アイザック。
米国軍刑務所というアメリカの“闇”を明らかにした意欲作である。
2010年、自給自足で生活する、あるキリスト教一派の村で、少女たちの体に次々と異変が
起こり出す。
朝目覚めると、寝る前にはなかったアザができていたり、出血をしていたり……。
驚く少女たちに対し、彼女らの母親たちは自分の娘を抱きしめることしかできなかった。
オフィシャルサイト
ある朝、不機嫌そうに目覚めたピーターは若い助手カール(ステファン・クルポン)に傲慢な
態度をとるが、カールは淡々と雑務をこなす。
ピーターが不機嫌なのは恋人と別れたからだった。
そんな傷心のピーターのもとへ、元恋人で今は親友の大女優シドニー(イザベル・アジャーニ)が
訪れる。
ケイト・ブランシェットがベルリン・フィル初の女性
マエストロ(主席指揮者)となったリディア・ターを
演じ、自身2度目のヴェネツィア国際映画祭主演女優賞
に輝いた本作は、虚栄心や猜疑心にとりつかれ、心身の
バランスを失っていくターの姿を描いたサイコスリラー。
役柄に徹底的になり切る演技派ケイト・ブランシェットの
狂気の演技は見応えたっぷりだ。
シドニーはオーストラリアからの船で偶然出会った俳優志望の青年アミール(ハリル・ガルビア)を
連れてくるが、ピーターはまばゆいほどの若さと美しさを放つアミールに瞬く間に魅了されてしまう。
そして、最終的な決断はさまざまな世代や立場の女性8人が納屋に集まり、話し合いで決める
ことに。
女性たちに許された時間は青年が保釈されるまでの2日間だった。
ライター:能登春子
密室を舞台にした挑戦的な恋愛劇
“愛”を求めた男たちの結末に驚く
“魂の死”を受け入れながら生きていくことの理不尽を、読み書きさえできない非力な女性たちが
一生懸命に話し合う。
8人の女性たちによる納屋での議論が淡々と続くが、さまざまな立場や経験からくる言葉には
説得力があり、深く考えさせられる。
http://transformer.co.jp/m/cardcounter/#
ターにとっては永遠の名声や、奔放な新人チェロリスト、オルガ(ソフィー・カウアー)への愛
などだが、欲望に対する人間の執着心の怖さをまざまざと見せつける。
80年代のフランスのヒット曲がちりばめられ、1984年に25歳の若さで急逝した
女優パスカル・オジェのオマージュとしてフランス映画『北の橋』(’81年)や
『満月の夜』(’84年)が引用されるなど、'80年代の熱いフランスが感じられる
のも興味深い。
日本のとある集落、霞門村に暮らす青年・片山優(横浜流星)は、村にある巨大なゴミの
最終処分場でいじめやブラックな仕事に耐えながら働き、夫の自死後、荒んだ生活を送る母
(西田尚美)が作った借金を肩代わりしていた。
苦悩を超えて、演技派として復活した
ブレンダン・フレイザーの熱演は必見
監督・脚本・製作の3役を務めるのは長編映画初監督作の『イン・ザ・ベッドルーム』
(’01年)で高い評価を受けた俳優のトッド・フィールド。
2作目の監督作『リトル・チルドレン』(’06年)以来、16年ぶりの新作として注目された
本作は、ヴェネツィア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受賞。
米アカデミー賞では作品賞を含む6部門でノミネートされるなど、国内外で高い評価を
受けている。
そんな希望の兆しが芽生えた1980年代のパリを
舞台に、時代の明るいムードとは裏腹に、夫の浮気
による離婚で絶望の淵にいた女性が新しい環境に
戸惑いながらも、自分の人生を歩き出す姿を描く。
[4月16日アップ]
他にも、大学生の娘ジュディット(メーガン・ノータム)の自立やマチアスの挑戦、さらに
エリザベートの恋など、新たな経験を通して少しずつ前向きになる一家の日常が淡々と
綴られる。
『新聞記者』以降も、『ヤクザと家族 The Family』
(’21年)、『空白』(’21年)など、日本社会の暗部に
迫る作品を次々に手掛けるスターサンズが本作で題材に
したのは、日本の“村社会”。
広大な自然に囲まれ、幼い頃からの顔なじみがたくさん
いる村の生活はある意味、逃げ場のない閉ざされた世界
とも言える。
そんな村社会に生きる若者が自らに課せられた悲惨な
境遇から逃れようとした先に待ち受ける運命とは…。
ライター:能登春子
[4月9日アップ]
4月7日より全国ロードショー
シャルロット・ゲンズブールが絶望を希望へと変えたエリザベートの心の成長を
繊細に表現している。
どんなに落ち込んでも、明けない夜はない。
眠れない夜を癒してくれる深夜ラジオのように、ノスタルジックな温かみのある
作品だ。
オフィシャルサイト
そんな救いのない日々に優はすっかり心を閉ざしていたが、幼なじみの美咲(黒木華)が
優の運命を変える。
東京から戻ってきた美咲はゴミ処分場に広報として勤めることになり、優をゴミ処理場の案内ガイド
に抜擢したのだ。
『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザーが
体重272kgの中年男性チャーリーに扮し、
本年度米アカデミー賞主演男優賞に輝いた話題作。
ゴミ処分場を見学に来る人々との交流を通し、明るくなっていく優。
霞門村の取り組みはマスコミに取り上げられ、優はゴミ処分場のPRのためテレビ出演を果たし、
美咲とも結ばれる。
ようやく未来が開けたと思った矢先、優はある出来事に遭遇する。
自らの過ちで愛する人々を失った孤独な主人公が、
自らの命を削って見つけた生きる上で大切なこととは?
壮絶な人間ドラマが幕を開ける。
https://bitters.co.jp/am4paris/
https://gaga.ne.jp/TAR/
特殊メイクやファットスーツ、デジタル技術などを駆使して、
驚異の超肥満体となったフレイザーは、自らを罰するかの
ような行為に至るチャーリーの複雑な心情を見事に表現。
物理的に不自由な身体をものともせず、全身全霊を注いだ
かのような渾身の演技は心を揺さぶり、高い評価もうなずける。
ハリウッドでの理不尽な扱いから心身の不調をきたし、
長らく表舞台から遠ざかっていたフレイザーが最高の形で
復帰できたのは本当に喜ばしい。
実写映像とストップモーションアニメーションを融合し、手作りの温もりに
溢れた本作は製作に7年の歳月を費やしているという。
日本でモロッコの長編映画が初めて公開されたのは、
今からわずか2年前の2021年というから驚きだ。
それほどまでにモロッコは日本から遠く離れた国
なのだろうか。
キャラクター、ストーリー、映像とすべてが良質。小さなマルセルの、ささやか
だけど最高の生活をぜひ大きなスクリーンで観てほしい!
著名な小説家だがスランプに陥り長らく執筆から遠ざかっているジュニは、音信不通に
なっていた後輩を訪ねるためソウルから離れた閑静な町の河南市へやって来る。
そこで偶然知りあった元人気女優ギルスに興味を抱いたジュニは、彼女を主演に短編映画を
制作したいと提案。
かつて成功を収めながらも人知れず葛藤を抱えてきた2人は、意気投合して映画制作を
することにする。
ミナ(ルブナ・アザバル)と夫のハリム(サーレフ・バクリ)
は、夫婦2人でカフタンと呼ばれる伝統衣装の仕立て屋を
営んでいる。
寡黙なハリムは衣装の袖や飾りボタンなどに美しい手刺繡
を施すカフタン職人で、快活なミナは接客係として店を
切り盛りしていた。
オフィシャルサイト
ウィリアムは普通に暮らそうとしていたが、青年カーク(タイ・シェリダン)により忌まわしい過去へ
引き戻される。
カークはかつて米軍刑務所いたカークの父がゴード(ウィレム・デフォー)という男のせいで
死へ追いやられたことからゴードに復讐を誓い、その手助けをウィリアムに頼む。
ゴードはウィリアムにとっても深い因縁のある男だった。
トウズが2005~09年にかけて南米・ボリビアの
とある宗教コミュニティーで実際に起こった出来事に
着想を得たという小説は、性暴力を受けた女性たちの
決断を描いている。
https://longride.jp/bluecaftan/index.html
『モロッコ、彼女たちの朝』は高い評価を受け、2作目となる本作も2022年
カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞、米アカデミー賞外国語映画賞の
モロッコ代表になるなど、世界的な注目を集めている。
ウィリアム・テル(オスカー・アイザック)は米国軍刑務所に10年間服役し、独学で
「カード・カウンティング」と呼ばれるカードゲームの勝率を上げる裏技を習得する。
出所したウィリアムはカジノを渡り歩いていたが、ギャンブル・ブローカーのラ・リンダ
(ティファニー・ハディッシュ)に誘われ、大金が稼げるポーカーの世界大会へ出場する
ことになる。
2018年に出版され、高い評価を受けたカナダ人作家
ミリアム・トウズの同名小説を映画化。
前時代的な衣装に身を包む女性たちの姿から昔話のような印象も
受ける。
けれども、2017年、ハリウッド女優たちが声を上げた「#Me too」
ムーブメントでようやく世界的に広がった、今なお続く闘いの物語である。
1970年代に異才を放ったドイツ人映画監督、
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの
『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(’72年)を
リメイク。
愛を求める人間の性(さが)に鋭く迫る、濃密な
世界が広がっている。
ライター:能登春子
5月12日より全国ロードショー
[5月14日アップ]
厳格なターは時に非情な面も見せるが、徹底したこだわりが素晴らしい音楽を生み出し成功を
収めたのだろう。
そんな元々の激しい気性に加え、成功から生まれたターの慢心と保身が楽員たちの心に
暗い影を落とす。
1981年5月10日にミッテラン大統領が誕生した
フランスはそれまでの33年にわたる保守政権が
終わり、変革の時を迎えた。
自由で開かれた時代の幕開けに
多くの人々が期待を膨らませたという。
人々の人生に寄り添う深夜ラジオが
優しく語りかける希望の物語
やがてクリスタの件で告発されたターは楽員の何者かの陰謀を疑い、闇落ちしていく―。
監督は『グリード 炎の宿敵』(’18年)のスティーブン・ケイブル・Jr.。19歳の時に
1作目を観て、「すぐにファンになった」というケイブル監督の熱い思いと若々しい
視点が映画に勢いを与えている。
製作にはアクション映画のヒットメーカー、マイケル・ベイ、製作総指揮には
スティーブン・スピルバーグが名を連ねている。
ティーンエイジャーの娘エイミーは反抗期で扱いづらく、
幼い息子のヘンリーは父の死のショックでふさぎ込み、
1年もの間、まったく話せなくなっていた。
ライター:能登春子
6月30日より全国ロードショー
性暴力に限らず、弱者をいたぶる卑劣な行為がはびこる世の中に
一石を投じた作品として、ぜひ観てほしい。
舞台は1972年の西ドイツ・ケルン。
瀟洒なアパルトマンに暮らすピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシュ)は著名な映画監督だ。
製作を手がけるのは、出演もしている女優のフランシス・マクドーマンド。
製作総指揮にはブラッド・ピットも名を連ねている。
演技派ケイト・ブランシェットの真骨頂
人間の心の闇を描くスリリングな心理ドラマ
https://womentalking-movie.jp/
描かれるのは、やがてアミールと恋人同士になるピーターの愛の行方。
アミールとの恋の始まり、甘い生活、アミールの心変わり、そして別れ…。
すべてがピーターの部屋の中だけで展開する密室劇となっている。
脚本も手がけるオゾン監督の映画はキャラクターたちの行動がとても
興味深く、人間という生き物の奥深さを考えさせられる。
本作では、年齢や容姿、身分など、さまざまなことが異なる男たちの愛が
どんな結末を迎えるのか。
愛に翻弄される中年男の姿を通して「愛とは何か」という普遍的なテーマを、
オゾン監督流の挑戦的なアプローチで魅せる。
ベルリン・フィル初の女性マエストロとなってから7年、
ターは指揮者としてだけではなく、作曲家としても成功を
収め、自伝の出版を控えるなど音楽界の頂点を極めて
いた。
私生活ではベルリン・フィルのコンサートマスターでヴァイオリン奏者のシャロン(ニーナ・ホス)
と愛し合い、幼い養女のペトラと3人で穏やかに暮らしている。
自らの夢をすべて叶えてきたターは公私ともに充実した人生を送っていた。
4月21日より
全国順次ロードショー
[4月23日アップ]
オフィシャルサイト
1984年。
ある日、番組のスタジオゲストにタルラ(ノエ・アビタ)という少女がやってくる。
収録を終えたエリザベートが帰ろうとすると行く当てのないタルラに出会う。
エリザベートはタルラを放っておけず、アパートに連れ帰り、上の小部屋に泊まらせる。
日本政府の闇を彷彿させた衝撃的な社会派ドラマ
『新聞記者』(’19年)を手がけた映画制作会社
スターサンズの最新作。
https://www.cetera.co.jp/nigainamida/
ケイトを当て書きしたという脚本は、ターの心の闇がじわじわと広がる過程を
丹念に描き、上映時間は約2時間30分に上る長尺となったが、リアリティの
ある心理ドラマとケイトの優れた演技に引き込まれ、それほど長さを感じさせない。
ケイトは実際にドイツ語とピアノを習得し、演奏シーンはすべてケイト自身が
演じているという。
指揮をするシーンもとても魅力的だ。
1981年。
パリ郊外が見渡せる大きな窓のあるアパートの角部屋で、長年、夫と2人の子どもたちとともに
暮らしていたエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)は離婚したことで、仕事を始めることに。
ろくに働いたことのないエリザベートは、ラジオ・フランスの深夜番組『夜の乗客』のベテラン
パーソナリティー、ヴァンダ(エマニュエル・ベアール)と面接し、なんとかリスナーからの
電話受付業務の職を得る。
ライター:能登春子
横浜流星が迫真の演技で引き込む
閉鎖的な村で起こる負の連鎖
4月21日より全国公開
父の自死が原因で村民たちから後ろ指を指されながらも、村に留まるしかない優。
閉鎖的な村で、生き辛そうな優の姿が本当に辛い。
『流狼の月』(’22年)に続く、社会派ドラマで陰湿的な役柄を演じた横浜流星の真に迫った
演技に驚かされる。
身体中のぜい肉が幾重にもたるみ、もはや一人では
立ち上がることもできず、日がなソファの上に寝そべる
チャーリーの姿はまさに陸に打ち上げられた瀕死の
“クジラ”のようだ。
醜い姿へと変わり果て、血圧は異常なレベルになり、
いつ命を落としてもおかしくない状態にもかかわらず、
チャーリーが過食を続けるのはなぜなのか?
そうせざるを得ないほど、辛く、哀しいチャーリーの
過去が徐々に明らかになる。
[4月2日アップ]
閉鎖的な村が象徴するのは、同調圧力がはびこる社会構造。
優の父や美咲、優など、大勢の中で異なる声を上げた人々が辿る末路が
決して幸せではない世の中に恐怖を感じる。
いつもは、会話劇、一旦途切れて会話劇、また途切れて更に会話劇と、
とりとめのない話で進んでいくのだが、今回は最初から1本の筋ありで
進行している。
ある日、2人は芸術家肌で腕のいいハリムのもとに次々に
舞い込む注文をさばくため、ユーセフ(アイユーブ・
ミシウィ)と名乗る若い男性を助手として雇うことにする。
2022年製作/92分/韓国 原題:The Novelist's Film 配給:ミモザフィルムズ
ところが、ミナは次第にハリムがユーセフに向ける視線が気になるようになる。
そんな感情を押し込めるようにミナはハリムと夫婦の時間を楽しもうとするが、ミナには胸に
秘めていることがあった。
病気が進行し、余命を悟ったミナは夫のためにある決断をする。
ライター:能登春子
6月16日より全国順次ロードショー
[6月11日アップ]
https://mimosafilms.com/hongsangsoo/
イスラムの戒律ではタブーとされる同性愛を盛り込んだ野心的な作品だが、伝えたいことは、
勇気を出して自分らしく生きることだ。
ミナの愛を受けて、ハリムがとった行動とは?
ミナを演じたルブナ・アザバルは壮絶なダイエットを行い、病気で次第にやせていくミナを体現。
女性らしい身体と共に夫からの愛が失われることを恐れ、哀しみながらも、強く生きようとする
ミナを好演している。
また、自らの愛の形に苦悩するハリムを演じたのは『迷子の警察音楽隊』(’07年)の
サーレフ・バクリ。
この忌まわしい現実に対してコミュニティーの女性たちはついに声を上げる。
女性全員で「1.赦す」「2.この地に留まり、男たちと戦う」「3.この場を去る」という選択肢の中から
投票を行うと、「1」が少なく、「2」と「3」が同数だった。
6月2日より全国順次ロードショー
[5月21日アップ]
[6月4日アップ]
本作はポール・シュレイダーが脚本・監督を務めた
スリラー映画。
マーティン・スコセッシが製作を務めており、カード・
ギャンブルの世界を舞台に、心に傷を抱えた男の
ハードなドラマに仕上がっている。
自らの尊厳を守るための女性たちの話し合い
今なお続く、忌まわしい問題を静かに問いかける
ライター:能登春子
6月2日より全国ロードショー
能面のような同じ顔の下に、人々はさまざまな本音を隠して生きている。
集団社会における普遍的な問題を、スターサンズならではの鋭くエグい
切り口で問いかけている。
チャーリーを含め、主な登場人物はわずか5人。
チャーリーの身体を心配し、世話をする看護師のリズ(ホン・チャウ)、布教活動のために
チャーリーの家を訪れたニューライフ教会の若い宣教師トーマス(タイ・シンプキンス)、
8年前に離婚したチャーリーの元妻メアリー(サマンサ・モートン)、そして、離婚以来
疎遠になった高校生の娘エリー(セイディー・シンク)。
誰もが愛する人へのわだかまりを心に抱え、苦悩している。
ライター:能登春子
世界的ブランド “エア・ジョーダン”を生み出した
仕事に熱いナイキの社員が起こした痛快逆転劇
4月7日より全国ロードショー
ナイキ最大の問題は、マイケルが「ナイキが嫌い」ということ。
一流企業のアディダスやリーボックとの契約を望むマイケルは「ナイキとは会いたくない」
とまで言う。
それでも掟破りの実力行使が功を奏し、何とかマイケルとの面談をこぎつけたナイキが
打った秘策が、洗練されたデザインや鮮やかなカラーリング、ブランドの価値を高めた
“エア・ジョーダン”というネーミングなど。
“エア・ジョーダン”の姿が徐々に形作られる開発エピソードにワクワクする。
ミュージカル映画界の新スター
歌って踊れるワニが大活躍!
アメリカの人気絵本『ワニのライルのおはなし』
シリーズがとびきり楽しいミュージカル映画になった。
ニューヨークを舞台に、“歌うワニ”、ライルをめぐる、
てんやわんやの大騒動が描かれる。
全編、明るいナンバーが流れる楽しいミュージカルだが、はちゃめちゃなヘクターに扮した、
いぶし銀の名優ハビエル・バルデムの突き抜けた演技がこの作品をより面白くしている。
1953年のパリ。
モンマルトルのヴァンティミーユ広場で、シルクの
イブニングドレスが血で真っ赤に染まった若い女性の
刺殺体が発見される。
遺体のそばには身元を示すものはなく、目撃者も
いなかった。
モフモフだけどカッコいい、ギャップに萌える
伝説のネコの活躍を描く待望のシリーズ第2弾
大人気フルCGアニメーション『シュレック』シリーズ
(‘01~’10年)から生まれた愛すべきキャラクター、
伝説のネコ“プス”の活躍を描く『長ぐつをはいたネコ』
の続編が11年ぶりに登場した。
孤独なタルラとの出会いが沈みがちなエリザベート一家の生活にちょっとした彩りを加える。
エリザベートはタルラの純粋な夢に心を動かされたり、高校生の息子マチアス(キト・
レイヨン=ㇼシュテル)は奔放なタルラにときめいたり…。
監督・脚本を手がけたのは女流監督マリヤム・トゥザニ。
日本で初めて公開された記念すべきモロッコ映画『モロッコ、彼女たちの朝』('19)は
彼女の監督デビュー作である。
まず、アーミッシュに代表される閉鎖的なコミュニティーが今なお続いていることに驚かざるを
得ない。
女性には教育の機会がないなど、徹底的な男尊女卑の世界だが、それでも“受け入れれば”
生活には困らない。しかし、果たしてそこが安住の地なのだろうか?
今年、日本ではフランスの名匠、フランソワ・オゾン
監督作の公開が続いている。
2月公開の『きっとうまくいきますように』(’21年)に
続いて登場した本作は、オゾン監督らしい、ひねりの
効いた恋愛ドラマ。
オフィシャルサイト
しかし、最近のターは新曲の創作に苦しみ、ベルリン・フィルで唯一録音できていないマーラーの
交響曲第5番の録音にも重圧を感じていた。
そんな中、財団のプログラムでターが指導した若手指揮者のクリスタが自殺する。
ターは巻き込まれるのを恐れて、クリスタとのEメールをすべて削除するのだが…。
ライター:能登春子
https://village-movie.jp/
オフィシャルサイト
チャーリーの悲惨な生活が中心となる展開は、全編暗く、やるせない雰囲気に包まれるが、
描かれるのは崇高な愛と赦しの物語。
人をひたむきに信じ、愛することの難しさと尊さをチャーリーが無様な姿をさらして伝える
クライマックスシーンは圧倒的な迫力を持って胸に迫る。
共同脚本を務めたヒューマンドラマ『グッド・ウィル・
ハンティング/旅立ち』(‘98年)が高い評価を受けた
マット・デイモンとベン・アフレック。
その後、2人とも主演映画は引きも切らず、とくにマット・
デイモンは演技派俳優として圧倒的な存在感を発揮。
また、ベン・アフレックは監督を手がけた『アルゴ』
(’12年)が米アカデミー賞作品賞に輝くなど、
製作者としても注目される。
そんな才能あふれる2人が再びタッグを組んだ本作は、
期待に違わぬ面白さだ。
仕事に熱い男たちの舌戦は、もし実際に言われたら凹んでしまいそうなブラックな発言の
オンパレードだが、仕事に妥協せず、とことん本音で言い合っている様子がとても清々しく
小気味よい。
気心知れた盟友マットとベンを中心に、ベテラン俳優たちがテンポのよい掛け合いを見せ、
臨場感あふれる展開にぐいぐい引き込まれる。
[3月26日アップ]
ライター:能登春子
3月24日より全国ロードショー
CGキャラクターのライルがとっても魅力的。特に小さな頃のライルはたまらなくかわいいい! 
ライルは言葉を話さず、音楽だけで自分を表現する。
音を聴けば、たちまち歌い踊り出すライルにつられて、観ている方もワクワクしてしまう。
ライター:能登春子
『仕立て屋の恋』の原作者でもある作家ジョルジュ・
シムノンの人気ミステリー小説『メグレ警視』シリーズ
の中から名作の呼び声高い作品を映画化した。
3月17日より全国ロードショー
果たして、マイケルと彼の両親を迎えたナイキでの面談はうまくいくのだろうか。
ナイキのみならず、マイケルやバスケットの未来を見つめてソニーが行った真摯な
プレゼンテーションに胸が熱くなる。
ナイキのサクセスストーリーとしてとても楽しめるが、本作を観て感じるのは
仕事を成功させる醍醐味。
成功とリスクは表裏一体だが、リスクを恐れてチャレンジしなければ成功もない。
無難な道を歩くのもいいけれど、険しい道を乗り越えた先も見てみたい。
世界的ブランドは作れなくても、今ある仕事をがんばってみたら新しい何かが
生まれるかもしれない。
そんな仕事への意欲が湧いてくる。
仕事に悩んでいる人なら、まずは本作を観て仕事に対して
ポジティブになることから始めてみるのもいいのでは。
冴えないショーマン、ヘクター(ハビエル・バルデム)が
古びたペットショップの片隅で、小さなオリの中で
楽しそうに歌い踊るワニの子ども、ライルを見つける。
ヘクターはライルをショーの相棒にしようと家へ連れ帰る。
ライルの歌と踊りは見事なもので、ヘクターとの息も
ぴったり。
そうしてヘクターはライルとのショー初日を迎えるが、
ライルは大勢の観客を前にしたとたん、歌えなくなって
しまう。
[3月20日アップ]
3月17日より全国ロードショー
監督は『レスラー』(’08年)でヴェネツィア国際映画祭
金獅子賞を受賞したダーレン・アロノフスキー。
『レスラー』でのミッキー・ローク、『ブラック・スワン』(’10年)
でのナタリー・ポートマンに続き、
主演俳優の力を大いに引き出した演出手腕にうならされる。
描かれるのは1984年に発売され世界中で大ブームを
巻き起こしたナイキのバスケットシューズ“エア・
ジョーダン”誕生の舞台裏。
人気がなく、業績不振だったナイキのバスケットボール部門を立て直すために雇われた
ソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)が、NBAデビュー前の新人選手マイケル・ジョーダンの
才能を見抜き、スポンサー契約を結ぼうとするが、数々の問題が待ち受ける。
映画作りをこよなく愛する仕事人、マット・デイモンとベン・アフレックからの熱いエールを
ぜひ受け取ってほしい。
ショーが失敗し、借金を負ったヘクターは自宅のアパートを手放し、1人でショーの旅に出る。
その間、残されたライルはアパートの屋根裏部屋に隠れ住むことに。
ライター:能登春子
15年ぶりに来日したブレンダン・フレイザー
https://warnerbros.co.jp/movie/air/
オフィシャルサイト
やがて月日は流れ、ライルの潜むアパートに少年ジョシュ(ウィンズロー・フェグリー)と家族が
越してくる。
パトリス・ルコント監督が描くパリの闇
重厚でクラシカルな雰囲気漂うミステリー映画
ステージの失敗と独りぼっちになった寂しさを抱えたライルは孤独なジョシュとの出会いで、
再び歌う楽しさを思い出す。
そして、ライルが自由に歌い踊る様子を見たジョシュや彼の両親にもポジティブな変化が現れる。
『仕立て屋の恋』(’89年)、『髪結いの亭主』(‘90年)
など、官能的な大人の恋愛劇に定評があるフランスの
名匠パトリス・ルコント監督の8年ぶりの最新作。
[3月12日アップ]
https://unpfilm.com/maigret/index.html
オフィシャルサイト
「願い星」を狙うのは、プスのほかに、不良少女ゴルディーと3匹の熊の犯罪ファミリー、魔法で
世界征服を図る極悪なジャック・ホーナー。
さらに、プスの元カノでスリの天才キティ・フワフワコーデや、プスをつけ狙う不気味なウルフなど、
それぞれ事情を抱えたキャラクターたちが絡み合うストーリーは細部まで練り込まれ、思い切り
笑った後にちょっぴりほろっとさせられる。
そんなスピルバーグが映画監督の夢を叶えるまでの
成長期の体験を綴った自伝的映画を製作した。
少年時代から8ミリカメラで、家族の記録や友人たちと
映画を撮影していたスピルバーグは、映画を作ることで
楽しさとともに、痛みを味わうことになる。
メグレ警視を演じるのはフランスの名優ジェラール・ドパルデュー。
被害者の女性に寄り添いながら真相に迫るメグレ警視を淡々と演じつつも、
深みのあるキャラクターに仕上げている。
そうして行き着いた保護猫ホームで、プスはどんな願いも叶う「願い星」の噂を聞き、再び9つの
命を手に入れるため、プスを慕う超ポジティブな犬のワンコとともに冒険の旅に出る。
SFファンタジー『E.T.』、戦争ドラマ『シンドラーのリスト』、
娯楽アクション『ジュラシック・パーク』など、さまざまな
ジャンルで数々の名作を生み出したスティーブン・
スピルバーグ監督は、まさに映画の神の申し子と
いっても過言ではないだろう。
『ラ・ラ・ランド』(‘16年)、『グレイテスト・ショーマン』(’17年)を手がけたシングライター・
デュオ『パセックポール』のベンジ・パセック、ジャスティン・ポールが4曲のオリジナル曲を
書き下ろしている。
カッコよかったり、かわいかったり、多彩な面を見せるプスが圧倒的な存在感を見せるが、
実は健気なワンコも人気が出そう。
豊かに特徴づけられたキャラクターたちが実に魅力的だ。
https://www.sing-for-me-lyle.jp/
オフィシャルサイト
映画は、不安げな表情の若い女性がブティックでドレスに着替えるシーンで幕を開ける。
その後、彼女は奇妙な行動を取り、死体となって発見される。
不穏な雰囲気漂う幕開けから、一気に物語の世界へ引き込まれる。
ライター:能登春子
3月3日より全国ロードショー
お尋ね者の賞金首プスは自由気ままにスリルと冒険を
楽しんでいたが、巨人との激闘の末、うっかり死んでしまう。
これで9つあったプスの命は8つを使い切り、残り1つに。
そんなプスの前に賞金稼ぎのウルフが現れる。
最後の命を失うことに恐怖を覚えたプスはレジェンドの
看板を下ろし、家ネコとして、おとなしく暮らすことにする。
映画監督への夢を支えた、ほろ苦い経験
スピルバーグの創作の秘密を紐解く自伝的映画
本作はすべてのシーンがスピルバーグの子ども時代に基づいており、
かなりプライベートな家族の問題までさらけ出している。
スピルバーグは子どもの頃から卓越した映画作りの才能を見せるが、
映画を撮らなければ彼が感じた痛みはもっと少なかったかもしれない
とも思え、天才に与えられた試練の大きさに切なくなる。
主人公は孤独な中年女性、アリシア。
物語論(ナラトロジー) の専門家として世界をまたにかけて
活躍しているが、想像力が豊か過ぎるあまりに、少女時代
から物語の世界に耽り孤独を深めていた。
[2月12日アップ]
それまでの平穏や生活や“最期”の時の光景など、悲しみに暮れる遺族たちの話を
聞くのは辛い。
プログラム反対派の遺族たちは人の命だけではなく、尊厳をも奪う行為に抗う。
そして弁護士たちもそんな遺族たちの気持ちに寄り添うよう心を尽くす。
若い女性の身元を探るうちに見えてくるのは1950年代のパリの闇。
夢と現実の狭間で揺れる若い女性たちが生きるパリとは? 
往年のクラシック映画を彷彿させる陰影の濃い映像が美しくも危うい世界を
見事に描き出し、ミステリアスな雰囲気を高めている。
https://whale-movie.jp/
オフィシャルサイト
ソニーはタフな人物で、ナイキの予算やNBAのルールなどを無視してジョーダン獲得に
まい進する。
その度にナイキのCEOフィル・ナイト(ベン・アフレック)や、スポーツエージェントからの怒声を
浴びるが、ソニーはまったく意に介さないどころか、逆に相手をやり込める。
鮮やかな色彩の映像も必見の価値あり。
ドリームワークスのクリエイター陣のイマジネーション豊かな世界を素直に楽しみたい。
[2月19日アップ]
2月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
旧約聖書にあるソロモン王とシバの女王の物語を皮切りに、愛欲や支配欲にまみえる
アラビアの“闇”の世界がイマジネーション溢れる映像で描かれる。
煙のように変幻自在に姿を変える魔人や、猥雑でエキゾチックなアラビアの光景など、
CGを駆使したマジカルな映像は素直に楽しめる。
アメリカ政府は被害者家族を救済するために、事件から
わずか11日後の9月22日に〈9.11被害者補償プログラム〉
を立ち上げたが、それはテロ被害者たちの命の価値を
測ることになった。
日本語版でプスの声を演じるのは山本耕史、キティには土屋アンナ。
オリジナル版でプスの声を演じるのはアントニオ・バンデラス、キティにはサルマ・ハエックと
イメージぴったりの俳優たちがキャスティングされている。
スピルバーグを投影した主人公のサミー・フェイブルマンは少年時代を3つの土地で過ごし、
彼の人生に大きな影響を与える経験をする。
幼い頃に過ごしたニュージャージーでは、初めて映画館で観た『地上最大のショウ』をきっかけに、
自分でも映像を撮ることに夢中になる。
ライター:能登春子
孤独な女性と魔人とのファンタジックな愛の物語
エキゾチックで幻想的なアラビアの世界は必見の
価値あり
そして、コンピューター開発の成果により父がIBMに転職したことから一家はカリフォルニアに
引っ越すが、アリゾナでの生活を恋しがるミッツィは精神を病んでしまう。
また、高校生となったサミーはユダヤ系であるためにイジメられたり、初恋をしたり、ありのままを
映し出す映画の怖さを知ったりと、ほろ苦い経験を重ねていく。
https://fabelmans-film.jp/
オフィシャルサイト
優秀な科学者の父バート(ポール・ダノ)の転職で移り住んだアリゾナでは、友人たちと本格的な
映画作りを楽しむ一方で、快活で感性豊かなピアニストの母ミッツィ(ミッシェル・ウィリアムズ)の
秘密を知り、心を痛めることに。
イスラムの説話集『アラビアンナイト』で語られる物語の
一つ、『アラジンと魔法のランプ』をモチーフにした
摩訶不思議な〈おとぎ話〉が繰り広げられる。
日本語吹き替え版でライルの声を演じるのは俳優の大泉洋。
心優しいライルにぴったりな繊細な美声を聴かせてくれる。
ヘクターの声にはミュージカル俳優の石丸幹二が扮し、迫力ある
パフォー・マンスを見せる。
事件の捜査を依頼されたメグレ警視(ジェラール・ドパルデュー)は若い女性が着るには
不釣り合いなほど高級なドレスを唯一の手掛かりに捜査を開始する。
モフモフした愛らしい見た目とは裏腹に心はワイルドで
ダンディなスゴ腕騎士のプスと個性豊かなキャラクター
たちが織り成す冒険は、キレッキレのアクションシーンも
ネコ特有のかわいらしさもグレードアップしている。
[2月26日アップ]
奇想天外なファンタジー映画だが、“孤独”をテーマにしたことで共感できるストーリーと
なっている。
完全に現実逃避できる、映画ならではの醍醐味を堪能しながらも、生きる上での“気づき”を
与えてくれるはず。
本作は、プログラムを束ねる特別管理人に任命された
ワシントンD.C.の弁護士ケン・ファインバーグの回想録
『What is life worth?』を基に、人の〈命の重さ〉について
静かに問いかける。
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https://www.3wishes.jp/
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しかし、年齢や家族構成、収入など、物理的な側面のみを鑑みたファインバーグのやり方は、
冷徹に“命の値段”を算出することになり、被害者たちは反発する。
描かれるのは、“命の値段”をめぐり苦悩する遺族と弁護士たちの姿。
さまざまな事情を抱えた遺族たちの話を聞くうち、ケンのチームの弁護士たちもケンの方法に
矛盾を抱くようになる。
誰もが人生の中で、ままならない出来事に遭遇することがある。それでも、すべての出来事には
意味がある。
だから、“乗り越えて”夢を抱く人々に向けたスピルバーグの力強いメッセージが心に沁みる―。
ジンと名乗る魔人は「解放してくれたお礼に3つの願いを叶えてあげよう」と申し出る。
そして、人間サイズになり、なぜかバスローブを羽織ったジンは自分の欲望が原因で3度も
瓶の中に閉じ込められたという身の上話を語りはじめる。
9.11事件後に起こった命を巡る物語
命の重みを静かに問う社会派ヒューマンドラマ
家族や自己のアイデンティティに悩み、どこか物憂げなサミーを演じた
ガブリエル・ラベルは繊細で思慮深いスピルバーグを彷彿させる。
そんなアリシアが講演のために訪れたトルコ・イスタン
ブールで不思議な体験をする。
バザールの土産物屋で購入した青と白の螺旋模様の
入った“ナイチンゲールの目”というガラスの小瓶から、
なんと巨大な黒い魔人 (イドリス・エルバ) が現れたのだ。
ライター:能登春子
2月23日より公開
https://fabelmans-film.jp/
オフィシャルサイト
人を愛したために瓶へ閉じ込められ、深い孤独を味わってきたジンに対し、アリシアは愛情を
抱くようになる。
やがて心を通わせた2人はともに生きる道を選び、孤独ではなくなるのだが、新たな問題に
直面する。
当国アメリカのみならず、世界中の人々に衝撃を与えた
9.11事件。
あの朝、普通に家を出た人々を突如失った家族や
恋人たちにはその哀しみや苦しみを癒す間もなく、
さらに惨い現実が突きつけられた。
熱狂的な映画好きとして知られるバラク・オバマ元大統領夫妻が本作にほれ込み、
彼らの創設した製作会社ハイヤー・グラウンド・プロダクションズが配給権を獲得
したことも話題の映画である。
https://longride.jp/worth/#home
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これまで9.11事件をテーマにした作品は、事件当日やテロ組織への報復の顛末など
アクション映画が主だったが、本作は事件後を生きる人々の姿を静かに追った
社会派ヒューマンドラマである。
やや地味な展開にも映るが、遺族の愛する人たちへの思いは胸に迫るものがある。
監督は『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー。
事件調停のプロを自認するケン・ファインバーグ(マイケル・キートン)弁護士は、独自の
計算式に則り合理的に補償金を分配しようと試みる。
鑑賞後は映画の魔法にかけられたような気分になるだろう。
“映画って、やっぱりいいな”と思わせてくれる逸品だ。